ケンちゃんクリーニング
投稿者:ねこじろう (147)
そして右手奥の壁際には天井まで届く棚が置かれており、様々なポーズをした女の子のフィギュアが並べられていた。
その全てはきちんとビニールで包装されている。
ケンちゃんは、ぐったりとなった女性を床に寝かせると、ホッと一息ついた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
─遅いなあS美、、、クリーニング屋さんに行くと言って出ていったきり、もう大分経つけど、、、
リビングのソファーに座るY子が、携帯画面で時間を見ながら呟いた。
S美とY子は同じ女子大に通う二十歳の女性で、とあるマンションの一室をシェアして暮らしている。
その日の夜、二人はT大の男子学生と合コンをする予定をしていた。
S美はそこに着ていく服をクリーニングしてもらうと言って朝イチに出ていったのだが、もう昼を過ぎようとしている。
携帯にも連絡を入れたが、連絡をとることは出来なかった。
─もしかして、事故?
一抹の不安がY子の胸をよぎる。
─とりあえず、クリーニング屋さんに行ってみよう。
そしたら、そこの店主が何か知ってるかも。
彼女はそう思って立ち上がり急いで上着を羽織ると、マンションを出た。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【ケンちゃんクリーニング】は、マンションから歩いて5分のところにある。
近くて便利ということで、Y子もたまに利用していた。
昔ながらの商店の立ち並ぶ中にあるクリーニング屋のドアを、Y子は開ける。
イラッシャイマセ、、イラッシャイマセ、、
無味乾燥な女性の声が彼女を出迎えた。
しばらくするとケンちゃんが「いらっしゃいませ」と笑顔で現れる。
Y子はカウンター前に立つと、かいつまんで帰ってこないS美のことを話し、最後に「何か知りませんでしょうか?」と尋ねた。
ケンちゃんは腕組みをして考えるような姿を見せた後、こう答えた。
「確かに朝方そのような女性が来店され、今日中に仕上げてほしいと言われましたが、無理ですと言うと黙って帰られましたよ」
「そうですか、分かりました」
そう言ってY子はケンちゃんに頭を下げると、店を出た。
その後彼女は、近辺にあるクリーニング屋をしらみ潰しに廻ってみたが、残念ながら何の手掛かりも得ることはなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Y子がマンションに帰ろうと歩きだした頃には、もう夕暮れになろうとしていた。
「洗濯屋けんちゃん」なら知っていますが‥
文章うますぎます。ひきこまれました。