叔父の思い出
投稿者:ぴ (414)
私がまだ幼いときに叔父が亡くなりました。
昔からの持病で亡くなったらしいです。
ずっと昔のことなので、叔父のことはほとんど覚えていないのですが、一つだけ強く記憶に残っていることがあるのです。
それは叔父に言われた「見てはいけない」という言葉でした。
私がいくつのときだったかまでは覚えていませんが誕生日の日でした。
家に親せきを招いてご飯を食べたことがありました。
料理が得意な母が腕によりをかけて作ってくれた数々の私が好きな料理とそして生クリームいっぱいのイチゴの乗ったケーキで、私はとても幸せいっぱいでした。
嬉しくてずっとにこにこしていたのです。
そのとき目の前の席に座っていた子がものすごくむすっとした仏頂面をしていて、それが気になったのです。
私の誕生日なのにその子はぜんぜん笑わず、誕生日会が始まってお誕生日の歌も歌ってくれないし、ずっとつまらなそうに座っていました。
私はその子のことが気に入りませんでした。
なんだか私の誕生日を嫌がっているように見えて、ムッとしたのです。
うちは何人かの親戚とはお付き合いがあるのですが、その日会った親戚は一度も見たことがない子でした。
あまりにその子の態度が悪いので、私は「なんでそんな顔するの?」とその子に話しかけたのです。
目の前の子は最初は驚いたような顔でこっちを見ていたのです。
なんというか戸惑いに揺れるような表情だったと思います。
しばらくそんな顔をした後に、私を見てニヤッと笑いました。
なんというか子供とは思えないくらいに、怖い笑顔でした。
突然隣にいた母に強く服を引っ張られて、驚いてそっちを見ました。
母はなんともいえない顔で、「何言っているの?」と困った顔をしていました。
母は私と目の前の席のほうを交互に見ました。
「だって」と私は母の視線を追いかけてみると、目の前には困った顔の眼鏡のおじさんがいたのです。
さっきまでいたむすっとした顔でこっちを見ていた男の子が突然いなくなって、おじさんに代わっているのに驚きました。
私の席の目の前にはあまり面識がなかった親戚のおじさんが座っていて、「どんな顔してたかい?」と困った表情で聞かれました。
私はこのおじさんに言ったわけじゃなかったので、「おじさんじゃないよ。
隣にいた子に言ったの!」と言いました。
そしたら母もおじさんも「隣の子?」と二人して分からないというような顔をしました。
子供がいたと一生懸命伝える私に子供なんていないわよと言われたとき、何を言うんだと思いました。
だって確かに私は同い年くらいの男の子をこの目で見ていたのです。
母が「ごめんねぇ、失礼なこと言って」とおじさんに謝りながら、私を謝らせました。
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