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心霊

おじさんさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

憶えていてほしかった
短編 2020/11/05 14:10 1,617view

あれは私が高校生の頃。

毎年お盆の時期には、家族で母方の祖父母宅へ出かけます。かなり過疎化の進んだ辺鄙な田舎で、祖父母宅の裏手の丘には曽祖父母のお墓が建っています。
到着するとまずそのお墓に手を合わせ、それから祖父母宅にある仏壇で、祖父がお経を上げる背中を見ながら手を合わせる、というのがお決まりになっていました。

あるお盆、私は部活動であったか受験のためであったか記憶は定かではありませんが、どうしても祖父母宅へ行くことができませんでした。

ある日の夜、いつもどおり歯磨きをしようと洗面所へ向かい、歯ブラシが入っている棚を開けました。しかし、歯ブラシホルダーにあるはずの歯ブラシはありません。両親に尋ねてもわからないと言われ、交換するために捨てたわけでもありませんでした。
首をひねりながらもその棚の中を探してみると、一番下の段の歯ブラシホルダーに入っているはずの歯ブラシが、一番上の段の、それも別なものの陰に隠れるように置いてあることに気づきました。
妹のイタズラだろうか、とも思いましたが、そのことで妹が私に何かを言ってくることがなかったので、イタズラをされたわけではなさそうでした。

次の日、洗面所で歯磨きをしようとして、またしても歯ブラシがないことに気が付きます。おかしいと思い、また棚を探してみると、昨日と同じように物の陰に隠れるように置いてありました。
それは数日続きました。

さすがにうす気味が悪くなってきましたが、ベッドに横になった時、ハッと脳裏によぎったことがありました。

“今年は曽祖父母のお墓参りに行っていない”

もしかすると、と思い、南無阿弥陀佛を三度ほど唱え、(今年は行けなくてごめんなさい。また来年にはお墓参りに行くよ)と心のなかで曽祖父母に伝えました。

すると不思議なことに、それから歯ブラシがどこかに移動するということはなくなりました。

あの出来事以来、なにか霊性的なものへ対する畏敬の念を抱きました。

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