誰もいないはずのトイレから・・・

とある病院の看護師をしていた頃の話です。同じ系列の病院へ異動となり、そこで初めての夜勤をしたときのこと。
２時間置きに患者さんの様子を見るため見回りへ行くのですが、その際に特に異常はありませんでした。
その病棟ではナースステーションの目の前に患者さん用のトイレがあり、患者さんが起きてくれば、こちらも誰が来たかがわかるようになっています。

0時を過ぎた辺りで、誰もいないはずのトイレから便器を流す「ジャーッ」という音が1箇所だけ聞こえました。
「あれ、誰かトイレに入っていたっけ？」と同僚と顔を見合わせ、恐る恐る見に行くと、トイレの中には誰もいません。
慌てて廊下に出て懐中電灯であたりを照らしましたが、やっぱり誰もいませんでした。

どうやら、その同僚の話だと、この病院になる前は元々は野戦病院だったそうで、戦争で沢山の負傷者が運ばれて来ていたとのことで、時々「お化けが出る」と噂になることもあったそうです。
まさか、自分が目の当たりにするとは…。背筋がゾッとしたのを覚えています。

ちなみに、私は霊感も強いわけでもありませんし、その同僚も霊感が強いタイプではありませんでした。
その日の夜勤は仮眠しようと思っても全く眠れず、目が覚めてしまいましたが、同僚も同じだったようです。

翌朝、日勤のスタッフへの申し送りの際に昨夜のトイレ事件の話をしたら、「やっぱりねぇ、出るのよね、ここ。」とニヤリと笑うベテラン看護師の意味深な顔が、今でも忘れられません。