水子供養のお寺
投稿者:ソレイル (10)
私の通っていた高校の通学路には、水子供養のお寺がありました。水子供養とは、胎児のうちに亡くなってしまった子どもの供養のことです。お寺の入り口のところに「生まれてこれなかった子どもたちよ」という感じのことが書かれた看板が立っていて、まだ学生だった私は、その雰囲気がなんとなく怖かった覚えがあります。
高校に入学して間もない、ある雨の日。怖い出来事がありました。傘を差してお寺の前を通りかかると、どこからか赤ちゃんの泣き声が聞こえたのです。
周りを見渡しましたが、道には誰もいませんでした。どこかの家から聞こえてきたのかもと思いましたが、お寺の向かいは駐車場、周りは森になっていて、住宅は一つも見当たりません。
毎日、そのお寺の前を通って通学していると、段々と分かってきました。雨の日にそのお寺の前を通ると、赤ちゃんの泣き声が聞こえるのです。声は、悲しげな感じや恨みがましい感じではなく、普通の赤ちゃんの泣く声でした。
あまりに自然に聞こえてくるので、私はびっくりしました。お寺の前を通るのが怖くなりましたが、高校へ行くにはその道を必ず通らなければいけませんでした。
そして私はある日、思い切ってそのお寺にお参りに行きました。学校帰りにお寺に立ち寄り、敷地内の小さなお地蔵様が沢山並んでいる所で手を合わせてきました。帰りに、お寺で売っていたお守りを買ってきました。
その日以来、お寺の前で赤ちゃんの声が聞こえることはなくなりました。お参りが功を奏したのか、とほっとしました。お寺に行った日からずっと、私はお寺で買ったお守りを鞄につけていました。それも良かったのかもしれません。
高校を卒業してから、あのお寺の前を通らなくてよくなり安心しました。
しかし一度だけ、高校時代の友人と母校の近くで集まって遊んだ際、お寺の近くを通ったのですが、その時また、赤ちゃんの泣き声が聞こえました。あの時はお守りをつけていなかったからかもしれません。
あの出来事があってから私は、赤ちゃんの泣き声が聞こえると背筋が震えてしまうようになりました。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。