学童の思い出
投稿者:リュウゼツラン (24)
小学生の時、母子家庭だった僕は学童に通っていました。そこには一年生から三年生まで、それぞれ家庭に事情がある子が三十人弱いて、学校の授業が終わってから夕方まで遊んだりおやつを食べたりして過ごし、五時になると登校班ではなく下校班? のようにグループになって家に帰るという流れでした。
預けられているのは片親や共働きという家庭環境の問題だけではなく、中には子供自身に理由があるケースもあります。
一つ年下のT君も、本人に理由がありました。軽度ではあるものの知的な障害があり、度々学校でも問題行動を起こしては教師に怒られ、本人も悪意がないので泣いたり喚いたりとなかなか大変な生徒だったと思います。
そんな彼は僕と帰り道が同じ方向で、グループで一緒に帰っていました。
何か興味があるとフラフラとそちらに行ってしまい、家に送り届けるのも一仕事でしたが、とはいえたった十数分なので、負担という程ではありませんでした。
しかし、それを不満に感じていたとある女子がいました。僕と同級生のSさんです。
「なんであたしがあの子を送らなきゃいけないの?」といつも不満を口にし、徐々に苛立ちを隠さなくなりました。
そしてある日。道端に落ちていた犬の糞を拾い「これさ、Tに食べさせてみない?」と言いだしました。
僕は「ヤバくない? 流石に」と言いながらも止めることはせず、何となく成り行きを見守っていました。すると、Sさんは葉っぱに包んだそれをT君に渡し「美味しいから食べてごらん」と優しい声で促すと、T君はそのまま口に入れ咀嚼を始めます。
数秒後、嘔吐したT君はその場にしゃがみこんでしまいました。焦った僕らは急いで学童に戻り先生を連れてT君を介抱しました。
先生に理由を聞かれてもSさんは「勝手にうんちを食べ出しました」と悪びれずに断言し、先生もそれ以上追及することはなくうやむやなままこの件は終わりました。
しかし、翌日とんでもないことが起きてしまいます。
T君のお母さんが自殺をしました。理由は分かりません。障害を持った息子のことが原因なのか、それとも全然別のことが原因なのか……。タイミング的にたまたまその件があった直後だっただけなのか、それがきっかけになってしまったのか……。
数年前、大人になったT君を地元で見かけましたが、仕事帰りなのか、作業員の服を着て買い物をしていました。立派に働いてるのを知りどこか安堵もしましたが、今でも心のどこかで罪悪感が拭い切れずにいます。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。