黒くて伸びる人(加筆修正版)
投稿者:kana (210)
嵐の夜である。
一人居残りの深夜残業を切り上げ、マンション2階の事務所を出る。
事務所の外廊下に出ると空は真っ暗で風がゴーゴーと吹いている。
階段を降りる前に、踊り場から外の様子を眺めてみた。
雨はまだ降っていないが、とにかく風が強くて木々がうねっている。
街並みが暗い。みんな雨戸を締め切っているせいだろうか。
ポツンポツンと街灯のまわりだけがわずかに明るい。
ふと、遠くの街灯に目が留まった。人がいる。
黒い合羽を着ているような、背の高い人だ。
どれくらいの距離だろう、100メートルか200メートルか、
米粒のように小さいが街灯に照らされて、そこに人がいるのが見える。
その人は右手にある公園へ入って行こうとしていた。
その公園は少し変わっていて、実は「横穴墓群」という古代人のお墓、
つまり古墳の上に作られた公園で、ちょっとした小高い丘のようになっている。
公園の中には水路も流れており、また大きな松の木もあるような比較的うっそうとした公園だ。ついでに言うと、オカルト映画にでも出てきそうな古井戸もある。
折からの風で、公園の木々も激しく揺れているのがここからでも見える。
見えると言っても本当に真っ暗で、暗い空をバックに暗い木々のシルエットが不気味に揺れているのである。
公園内もほぼ真っ暗で、とても人が入って行けるようには思えない。
自分だったら絶対に入りたくないと思うほど不気味な雰囲気だ。
なのに、そこに入っていくあの黒い人はいったい何者なのだろう?
そういえば変だ。おかしい。この暗いのにあの人はなぜこんなにハッキリ見えるのだろう。
暗い公園の森の中に黒い合羽を着た人が入っていく様子がまだ見える。
いや、あの人のシルエットが、なんだか薄ぼんやり光っていないか?
街灯の光がまだあの人を照らしているのだろうか・・・そうは思えないのだが・・・。
疑問に思ってさらによく見てみると、なんだかさっきより背が高いような気もする。
高いというか、公園の階段を上り、林の中に入っていくほど、どんどん背が伸びているような・・・2メートル・・・3メートル・・・
なんだあれは?
大きく目を見開いて、さらに見てやろうと踊り場から身を乗り出したとき、
その黒い人がくるっと正面をこちらに向けた!
「うそっ!」
kamaです。ぶっちゃけ言うと、大田区の多摩川沿いの町にある公園です。
多摩川沿いってのは実はこの横穴墓群という古墳時代の遺跡がけっこうたくさん出てるんですよ。
まぁこれ以上言うと場所特定されそうなんで内緒にしときます。
万が一分かった人がいても、内緒にしといてください。今そのあたりは高級マンションが建ってて、皆さん怖がるといけないので。
kamaです。
よくこうやって怪談を投稿すると、それに関するニュースが突然ながれてくるんですけど、
投稿翌日に「旧石器人や縄文人、弥生人はどんなコトバを話していたのか?」という記事が出てきました。なんか、ひっかかるんですよねぇ。