アサコが死んだ
投稿者:YoyoYoyoY (52)
短編
2022/12/30
10:10
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祖母は、霊感の強い女性でした。
金縛りにしょっちゅう遭ったり、変な夢にうなされたりと、夜という時間は心地よく過ごせない魔の時間でした。
そんな祖母は、魔除けのために大きな裁ちハサミを布団の下に忍ばせていました。
あるとき、それを発見して驚いたので聞いてみました。
「何でそんな危ないものを布団の下に敷いてるの?」と聞くと、祖母は
「本当は包丁が良いのだけれど、さすがに危ないから裁ちハサミにしたのよ」と教えてくれました。
ハサミでも十分危ないよと思いましたが、祖母独自の魔除けだったのでこれ以上触れないようにしました。
毎年、祖母は元旦に1年を象徴する夢を見ます。
とある年の元旦の夢では、お化けが「アサコが死んだ、アサコが死んだ」と連呼していました。
アサコとは、祖母の末の妹と祖母の長男の嫁の名前でした。
どちらかのアサコに、不幸があるのだろうか?
祖母は不安になりました。
「私の夢って、絶対に当たるのよ」
どちらも大切なアサコです。
そんな不安な夢から半年ほど経った頃、長男の嫁であるアサコは若い男と浮気をして、家を出てしまいました。
才色兼備で、賢い自慢の嫁だったので、祖母のショックは大きかったようです。
「アサコが死んだって、うちの一族から離れるってことだったのかな」と祖母は残念そうにうなだれました。
「次は良い夢を見て、楽しい1年になるよ」
私は祖母の背中をさすりながら、自分にも言い聞かせました。
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