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心霊

ぴぬぬさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ほたる狩り
短編 2022/12/24 23:39 741view

夏にホタルを見ようと、姉妹で出かけた時のことです。

私が運転し、姉が助手席に乗っていました。すこしホタルのシーズンも過ぎていたし、田舎であることもあって、まわりにはまったく人も車もおらず、ただ私たちの乗った車だけが真っ暗な山道を走っていました。

ホタルの里への道はうろ覚えでしたが、さびれているとはいえ一応観光用の場所なので看板は出ているはずです。一本道ですが駐車場へ入る曲がり道があるはずなので、看板を見落とさないよう助手席の姉に頼みました。私は車をゆっくり走らせ、姉は街灯もない山道に目を凝らしていました。

「あ、看板あった」と姉が言ったので、一緒に確認して見ると、それは火葬場駐車場の案内でした。急に怖くなって「もう!やめてよ!」とアクセルをふみ、また看板を探しながら山道をのぼっていくと、やっと目当ての看板が見つかり、駐車場へ入ることができました。

車を降りた時、自分たちがここが田舎であることを失念していたことに気が付きました。懐中電灯を持っていなかったのです。ヘッドライトを消すとまっくらで、ほんとうに何も見えません。月は出ていましたが、いかんせん山奥ですし、木々が邪魔をしていて恐ろしく暗かったです。

ホタルは水辺の生き物ですから、基本的には沢になっており、足を滑らせれば危険です。「どうしよう、スマホのライトでいけるかな?」などと相談していると、突然右耳のすぐ後ろから「オォ…」と低い男の声のようなものが聞こえ、全身が総毛だちました。しかし振り返ることはせず、普段通りを装って「やっぱスマホじゃあぶなそうだし、かえろっか」と姉に声をかけて、車に乗り込みました。声はぜったいに耳のすぐ後ろから聞こえました。息がかかるくらいの距離の音だと思うのですが、吐息のようなものは感じず、かえって不気味に思いました。

あとになって知ったのですが、その前の年の夏に豪雨災害に巻き込まれ、近くで一人亡くなっていたそうです。亡くなったのは男性だとか。
あのままホタルを見にいっていたら危なかったかもしれません。

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