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呪い・祟り

窓際族さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

山姫様の祟り
短編 2022/10/15 11:44 2,070view

S県T町は田舎ながらも、農林業や観光業が盛んな地。
おいしい農作物や素晴らしい景色を求めて年中たくさんの人がやってきます。
私も仕事で一度だけ、その町に行ったことがありました。

個人的に印象深かったのが昭和の雰囲気漂う温泉施設。
正直値段は高かったですし、なかなか混んでもいましたが、温泉も料理も上質でとても満足できるものでした。
しかし、それはあくまで脇役。
私たちはそこでもっとゆっくりしたかったのにと思いつつ、温泉を後にしてその日の現場へと向かいました。

幸運なことに、現場は非常にぬるいものでした。

おまけに風光明媚な場所で、高所から見渡せる景色や周囲の山々は最高。
仕事を早々に終えた私たちはこの景色を保存しておこうとスマホを取り出したのですが……

「やめておけ」

現地の人に止められてしまいました。
何かまずいものでもあんのかなと思いつつ言われた通りにすると、その人は「山姫様の祟りが移る」とも言いました。
私は「山姫様って何だよ」と心の中で突っ込んでいたのですが、他の人が思わずそれを声に出してしまいました。
すると、現地の人はこんな伝説を教えてくれました。

昔々、R山に山姫様という神様が住んでいた。

山姫様には足が一本しかなく、しかもそれはたいそう醜いものだった。
ある時その足を見られた山姫様はひどく悲しみ、山から火を下ろして里を焼き尽くした……

その祟りの影響は今も続いているらしく、ここら近辺では昔から山火事や不可解な霊現象がしばしば発生するのだとか。
気になってスマホで調べてみると、確かに近くのY山の火事がニュースになっていました。
なので私たちは大人しくそこを速やかに離れましたね……。
さらに恐ろしいことに、その後狂ったおじいさんが山に放火して回り、約1,000平方メートルを焼くという事件も発生してしまったようです。

とはいえ、そこはおいしい豆腐や地酒でも有名なくらい湧き水や地下水に恵まれた地域。
仮に放火したとしても大火事になるなんてことはなかなかイメージできないんですけどね……。
しかし現実にはそうなっているので不思議なものです。

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