田中さん(仮名)
投稿者:ぽっけ (10)
私が20代の頃事務員として勤めていた会社での話です。
社内は禁煙で、社員のみんなは廊下に出てすぐ左にある非常階段の踊り場でタバコを吸っていました。
昔から少し霊感のある私は何となくそこに”影”があることは気が付いていましたが
タバコを吸うにはその踊り場か、ビル1階に入っているコンビニの前まで下りて行くしかなかったので
非常階段の踊り場で営業マンと一緒に吸うことが多かったのです。
よく仕事中にお手洗いに行くため事務所を出ると視界の端の非常階段の踊り場に影が映りこみました。
でもこの会社で他に見えている人はいないので口には出さずにいました。
会社に一回り年上の田中さん(仮名)が入社してきました。
あまり清潔感はなく、殆どが20代の営業マンの中では少し浮いていました。
田中さんは私のほうをボーっと見ていることがあり、用事でもあるのかな?と見ると目をそらされることがありました。
あるとき、たばこを吸おうと廊下に出た瞬間、影に出会いました。
するとちょうど正面のエレベーターから営業戻りの田中さんと鉢合わせしました。
影を見て止まっていた私を見て、田中さんが「見えてるんですよね?」と聞いてきました。
その言葉にぞっとして「田中さんも…ですか?」と聞くと
「今日は踊り場にいるんですね」と笑いながら事務所に消えていきました。
その翌週から田中さんは無断欠勤が続き、退職となりました。
「今日は踊り場にいるんですね」というのはもしかしたらいつもは違うところにいるということでしょうか。
こちらの「方向」をジーっと見ているのは私ではなく私の後ろ…だったのかもしれません。
まさか田中さんはとり憑かれた?