立烏帽子
投稿者:コシQ (4)
短編
2022/08/31
17:47
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故郷に伝わる妖怪に「立烏帽子」がいます。
海に出る妖怪で
名前の通り、黒い縦長の帽子のような物が海から屹立している
そんな妖怪です
子供の頃、冬の海に父と散歩に行きました。
海沿いに住んでいるので、季節に関係なく海岸が散歩コースでした。
その冬の日も家から海岸まで歩き、砂浜で休んでいると
突然大きな波が打ち寄せて、波打ち際に置いてあった僕の靴があっと言う間に攫われました。
咄嗟に追い掛けようとした僕の腕を掴んだ父が
とても強い口調で
「冬の海に入ったら絶対にダメ」
「冬の海が持っていった物を取り返そうと考えてはダメ」
と注意した、その肩の向こう
グレーの海に、黒い縦長の何かが立っていた事を
はっきりと覚えています
靴は帰ってきませんでした。
父が立烏帽子の事を知っていたのか、今でも分かりません
ただ
「冬の海には入らない」
「冬の海が持っていった物を取り返さない」という事は
大人になっても破ることのできない、強いルールになってます。
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