音がしない部屋に住む4人家族
投稿者:だれパンダ (31)
以前住んでいたアパートの話です。
そこは築25年、二階建て安アパートでした。
親元から自立したばかりの私はアルバイトをしながら独り暮らししていたのですが、ある時隣の部屋に4人家族が引っ越してきました。
その日はバイトが休みで部屋にいた為、アパートに面した通りに引っ越し業者のトラックが停まり、ツナギ姿の作業員が階段を上り下り、荷物を運びこむのがよく見えました。
引っ越し業者のトラックを見送ったのは30代後半らしい両親と小学生程度の男の子、母親に抱かれた赤ん坊です。
窓から遠目に眺めていただけですが、どことなく生気のない一家だなという印象を受けました。
ふと顔を上げた母親と目が合いそうになり、私は慌てて引っ込みました。
その後しばらくは平穏に過ぎました。
私はバイトで忙しくアパートにはほぼ寝に帰るだけ。
他の住人と交流もなかったので、隣室の異常に気付くのが遅れました。
最初に妙に思ったのは洗濯物です。
バイトが休みの日、溜まった汚れものを洗濯機にかけてベランダに干していた時に気付いたのですが、4人家族が住んでいるにもかかわらず、隣のベランダに一切洗濯物が見当たらないのです。
よく晴れた平日の昼、もし母親が在宅しているなら不自然です。
その時はまあそんなこともあるかと流したのですが、他の日もベランダに洗濯物が干されることはありません。
もっと奇妙なことに、隣の部屋から一切物音がしないのです。
築25年のあちこち傷んだ安アパート、家賃が安い分壁は薄っぺらく生活音が筒抜け。
階下の住人のテレビの音に随分悩まされていた私にとって、子供を含む4人家族が暮らす部屋から何も音や声が聞こえてこないのは異常でした。
ひょっとして、住んでないんじゃないか?そういえば廊下ですれ違ったこともない……。
家財道具だけ部屋に運び込んだ理由はわかりませんが、そう考えたほうがまだしも妥当です。
ですがある日、外出先から帰宅した私は、肩を落として階段を上っていく隣室の男性を目撃します。
見た目はごく普通の背広を着た、どこにでもいるサラリーマン風の男性です。
小脇には書類鞄を抱えていました。
階段の下で立ち尽くす私が凝視する先、男性は隣室のドアの鍵を開け、スッ……と中へ吸い込まれていきました。
突然、私はとても怖くなりました。
隣に人が住んでいるのは確かなのに、何故何も聞こえないのか?
何故洗濯物が一枚も干されないのか?
赤ん坊の夜泣きや子供のはしゃぎ声すら聞こえないなんて、あの部屋は異次元に繋がっているのではないか……。
後日、私は引っ越しを決めました。
あの4人家族が何者だったのかはわかりません。
洗濯物は外に干すとは限らないしね
ドラム式か浴室乾燥じゃ
生活保護の不正受給じゃないの
生活の実態がないのは本当に生活してないから、書類を持った男は役人