死んだふりする幽霊……?
投稿者:逆手男 (2)
これは圭ちゃんと呼ばれている、中学2年生の男の子が体験したお話です。
4月のある日、次は体育の授業です。圭介君はジャージ姿で体育館へ行きました。
クラスメイトはすでに集まっています。みんなおそろいの学校指定のジャージの上下です。そこに一人だけ、上は長袖ジャージなのに、下は短パンを履いた子がいます。ひざ丈のハーフパンツではなく、太ももを大胆に露出した短い短パンです。そして白いハイソックス。圭介君は「元気だなあ」と思いました。その日は4月にしては寒く、体育館の中も底冷えのするような寒さだったからです。
そして圭介君はふと思いました。あんな子、うちのクラスにいたかな?2年生になってクラス替えしたばかりなので、まだ全員の顔と名前は一致していません。しかし、その子は女の子のように可愛い顔をしていて、凄く目立ちます。今まで見たことないなんてありえません。でも圭介君には記憶が無いのです。
圭介君は、思い切って「ねえ」とその子に話しかけました。少しだけ圭介君より背が低いその子は、話しかけられたことに驚いたらしく、ポカンと口を半開きにして、圭介君を上目遣いで見ました。圭介君は思わずドキドキしてしまいます。面と向かってみると、本当に今まで出会ったどの女子より可愛い顔をしています。
圭介君は気を取り直して、「寒くないの?」って話しかけました。するとその子は「エッ⁉」という表情です。圭介君は「いや、一人だけ短パン履いてるから」としどろもどろに言います。するとその子は「寒いに決まってるでしょ。だから長袖着て、ハイソックス履いてるんだし」と頬を膨らませて答えます。その表情も可愛いです。
しかし圭介君は「こいつボケてるのかな?」って内心思いました。どう突っ込もうかと悩んでいると、体育の先生から「集合」と号令がかかりました。
準備運動が終わり、その日の種目はバレーボールです。まずは数人輪になって、ボールを打つ練習です。圭介君のすぐ横の輪に、その短パンの子は入りました。しかしどこか不自然です。その子の周りだけ、等間隔の輪になっていないのです。強引に輪の中に、その子が割り込んでるような感じです。圭介君は何故かとてもその子を気にしてしまい、ずっと見ていました。
すると、中々その子にボールが渡りません。なんだか他のクラスメイトは、わざと無視しているみたいです。やがてやっとその子の元にボールが飛んできました。その子はボールを打ちます。しかしボールは明後日の方向に飛んでいきます。さらに圭介君は驚きました。その子はボールを打った手首を押さえて、「うわあっ!……あぁ」と痛がると、その場に大の字に倒れて目を閉じたまま動かなくなったのです。
「うそでしょ?ボールを打ったくらいで失神?」しかしさらに驚いたのは、他のクラスメイトたちの反応です。「あーアウトかよ」とひとりの子がボールを追いかけていきました。そして倒れている短パンの子は完全無視です。
少しして先生が「集まれ!」と叫びました。もちろんみんな集まります。しかし短パンの子は倒れたまま動きません。先生もほかのクラスメイトも気にしてないようです。これは一体?
その後も短パンの子はずっと倒れたままでした。そして飛んできたボールがその子のお腹に当たります。するとその子は「うっ!……あっ……あっ……」とお腹を押さえながら悶絶して、再びグッタリすると身体をビクンビクン痙攣させます。でも誰も気にしません。
圭介君は思いました。まさかと思うけど、あの子が見えてるのは俺だけ?もしかして幽霊?俺って霊感あったのか?でも、幽霊も失神するの?いや、演技かな?なんで?見えてんの俺だけだとしたら、俺にああいう姿を見せてるわけ?何もかもわからない……
体育の授業が終わると、短パンの子は何事もないように立ち上がって教室に戻っていきました。今までずっと倒れてたのに、元気そうです。やっぱ演技だったのかな?
そして次の授業が始まりました。短パンの子は窓際の一番後ろの席に座っています。「あれ?あの席空いてなかったっけ?」と圭介君は思いました。そしてその子は、上こそジャージからYシャツに着替えるも、下は短パンのままでした。なんだかセクシーです。
授業中、先生は棒のようなものを常に手にしていて、ノートにいたずら書きなんかをしてるような子の机を叩いていました。もちろん生徒は叩きません。しかし先生は短パンの子の横に来ると、その子の頭を叩きました。短パンの子は「痛ったあい」と言って、机に突っ伏したまま動かなくなりました。目は閉じて口は半開きで、微かに痙攣しています。やはり先生も他のクラスメイトも、気にしてないようです。圭介君は気になって授業に身が入りませんでした。
そして放課後になりました。短パンの子は、相変わらず短パン姿のまま帰っていきます。圭介君は後をつけました。どうしても正体を知りたかったからです。
少し歩いて学校から離れると、短パンの子は立ち止まって言いました。「いつまで僕をつけてるの?」と。
圭介君は思い切って尋ねます。「君、幽霊じゃないの?」「……」短パンの子はまた、口をポカンと開けて圭介君を見つめます。そして笑い出しました。
「な、なにが可笑しいの⁉」と圭介君はちょっと怒ります。
すると短パンの子は、そのまま歩き出します。圭介君もついていきます。
そして駄菓子屋さんに来て、短パンの子は中に入りました。圭介君ももちろんついていきます。
店内には優しそうなおばあちゃんがいて、二人を見るなり、「圭ちゃん、いらっしゃい」と言いました。
短パンの子は「ラムネください」と言いました。圭介君は「俺にも」と言いました。
でもあれ?圭介君の脳裏に疑問がいくつか湧き出ました。
短パンの子、普通に注文してるけど、このおばあちゃんにも見えるのかな?
それに「圭ちゃん、いらっしゃい」っておばあちゃん言ってたけど、俺がこの店に来るのは初めてだぞ。
するとおばあちゃんはラムネを1本だけ持ってきて、「ハイ圭ちゃん」と短パンの子に渡しました。
短パンの子はラムネのふたを開けようとします。しかし「うわあっ!手首折れたあ」と言って倒れてしまいます。
おばあちゃんは「大丈夫?」って心配そうです。
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