妖精の靴
投稿者:ぴ (414)
私はよくおじいちゃんところの田植えを手伝っていました。
田植えはぬかるんだ田んぼの中に入って、稲を植えます。それが楽しくて楽しくて、いつも自分から田植えを手伝っていました。
ただ子供だったので、田植え中に別のものに気を取られることも多々ありました。
私はその日、田んぼの横に生えていた草むらの雑草をひたすら引き抜いて遊んでいました。
その雑草の中に小さなピンクの靴を見つけたのです。
ミニチュアみたいに小さな靴なのです。
私はそれを拾ってすぐに母親のところに走り出しました。
私がキラキラした目でその靴を見せびらかしたのですが、田植えを手伝っていた母にはただの汚らしい人形の靴に見えたのでしょう。びっくりするくらい構ってもらえませんでした。
とぼとぼと元の草むらのところに戻って、靴を元通りの場所に返しました。
そしてしばらく雑草を抜いていたら、あの靴が無くなっていることに気が付きました。
さきほど置いた場所にさっき見つけたミニチュアの靴がありません。
おかしいなとその辺りを探していたら、何かが駆け出すような音がしたのです。
タタタッとそれは何かが走っていくような音でした。
私は思わずぬっと草むらの隙間からそっちを見たのですが、見てしまったのです。
お人形みたいな小さな小さな小人がピンクの靴を履いて、雑草の中走っていく後ろ姿を私は見ました。
私はそれを見てわっと心躍りました。
すごいものを見たと思って、目を輝かせます。
その後すぐに母や祖父母に駆け寄ってその話をしましたが、誰一人として私の話を真面目に聞いてくれる人はいなかったです。
あの辺りは昔妖精を見たという人がちらほらいたと聞きます。
私はもしかしたらそういったものを見たのかもしれません。
そして私は拾った靴を返してしまったことを少し後悔しています。
それが妖精の靴だと知っていたら、大事に取っておきたかったです。
いや、返して正解。
普段見えないだけで沢山妖精はいると思います。
出逢えた事が羨ましいです。
ピンクの靴は返してあげて良かったのではないでしょうか?