発狂、逮捕、大病、事故……勤めると不幸になる浄水場
投稿者:窓際族 (47)
県職員のAは辟易した。
部下の一人が突然苦しみだして発狂し、そのまま休職に追い込まれてしまったのだ。
Aが勤めていたのはとある県営の浄水場。
新型の設備や親水広場を備えた、比較的新しくて大きくて立派な浄水場だ。
ハイスペックな防災拠点としての機能もあり、台風や地震の際には大活躍したこともある。
だが、どういうわけか多くの職員はそこへは行きたがらなかった。
若手の職員は特にだ。
なぜならそこに勤めている職員に不幸な事象が降りかかることが多かったから。
しかもそれは人生を台無しにするレベルのものが多く、またどういうわけか若手の男性職員が被害を受けることが多かった。
例えば先の発狂して休職した部下の前任者は、ある犯罪を犯して逮捕され、長らく刑務所暮らしをするハメになった。
もちろん県職員はクビに。
公務員の犯罪ということで全国ニュースになり、実名が広まってしまっている以上刑務所から出ても再就職や結婚は絶望的だろう。
ちなみにAは若手というわけではなかったが、彼もまたここに赴任してから手術が必要な大病を患うという憂き目に遭っていた。
幸い彼は無事手術を乗り越え後遺症も無かったが、後遺症が残ったり、最悪の場合死んでもおかしくはないケースだったという。
また別の部課ではやはり若手の男性職員が公用車で事故を起こし、とんでもない騒ぎとなったこともあった。
しかも相手は一般の県民様。
言うまでも無く県職員が公用車で県民様に被害を与えるなどあってはならないことで、お偉いさん方は謝罪に交渉にと神経をすり減らしながら奔走するハメになった。
とはいえこうもトラブルが続けば、普通の人はこう思うだろう。
「所属長は何をやっているんだ。教育やマネジメントはどうなっているんだ」と。
実際、そう思われた幹部職員の何人かは左遷人事の憂き目に遭った。
だが、当時の浄水場長はAの同期であり、親友。
浄水場長が優秀であり、ガタガタだった他の出先機関を立て直した実績もあるくらいだということを知っていた。
また、こういったトラブルは誰が浄水場長になってもなくならなかった。
ゆえにAは「もしかすると霊か何かが悪さをしているのではないか」と思うに至ったのだ。
というわけでAは知人である占い師のMに協力を依頼した。
勤め先の浄水場を視て欲しい、そしてもし悪い霊がいたら、それを何とかして欲しいと。
そしてMは承諾した。
セキュリティの関係上浄水場の中に入れない以上できることは限られるが、できるだけのことはやりましょうと。
Mは普段は占い師として活動しているが、霊能力を生かしこういった依頼を受けることもある。
またパワーストーンや人工精霊、霊障、龍脈などにも詳しく、他の霊能力者やお寺がさじを投げた問題を解決したこともある。
ゆえに名前はそんなに売れているというわけではなかったが、クライアントからの信頼は厚かった。
水場は怖い。
よく川や海や湖のすぐ、近くでキャンプとかもしもしてるなぁと思う。