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呪い・祟り

窓際族さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

発狂、逮捕、大病、事故……勤めると不幸になる浄水場
長編 2022/06/12 12:31 7,434view
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だが、さすがのMもこの浄水場には辟易した。
というのも、地元の守り神の激しい怒りを買っていたからだ。
おまけにその効果は浄水場内の大量の水によって増幅されてしまっていた。
水には元々想念を映し出したり、増幅したりという性質があるうえ、守り神の怒りが水に関係しているという点も良くなかった。
ゆえに組織の下の方の「悪想念が集中しやすい場所、下りてきやすい場所」、具体的には若手の男性職員に人生が台無しになるようなひどいトラブルが降りかかっていたのだ。

では、なぜ土地の守り神が浄水場に対して怒っていたのか?
それを説明するには、浄水場がある町の特徴から述べなければならない。
この町には水はけの悪い低地が多く、昔から今に至るまで稲作が盛んである。
無論、田んぼを維持するのには当然水が必要だ。
そしてそのための水は、近くの大きな一級河川から取っている。
一方、浄水場もまた水道水を作るための水を近くの川から取っている。

そう、つまり田んぼと浄水場とで同じ川の水を取り合ってしまっているのだ。

世間ではあまり知られていないことだが、例え浄水場であろうと川の水を無制限に取水することはできない。
またそれは農家さんたちにとっても同じ。
誰が水をどれくらい取って良いか、誰が優先的に水を取って良いかは厳密に決められており、それを破ることは許されない。
ちなみに浄水場は、実は多くの取水を許されておらず、またその優先度もかなり下の方。
ゆえに渇水が起こると水が取れなくなってしまうので、大きな水のタンクを何個も作って最低でも一週間分くらいの水は貯めておけるようなシステムにしてある。

とはいえ、それでも浄水場ができ、それが多くの水を持っていくというのは地元の農家さんたちからすれば面白くないことだ。
ゆえに地域にお金を落とさせたり、ダムや河川敷の管理に多くのお金を使わせたりということをしているが、それでも不満は収まらない。
そしてそれが人によって作られ、長く信仰されてきた地元の守り神を動かしてしまったのだ。

ゆえにMによる守り神の説得は非常に難航した。
守り神から見れば浄水場は農家さんたちから大量に水を奪い、そして溜め込んでいる不届き者。

この地に住まう者のために浄水場を成敗しようと思うことはある意味当然のことである。
また水は人の生き死にに直接影響するもの。
水に関することについて簡単に譲歩できないのは、人にとっても神にとっても同じである。

結局、Mは「守り神を説得する」ということを諦め、「浄水場の職員を守り神の影響から守る」という方向に切り替えることにした。
もちろん説得は時間をかけて定期的に続けてはいるようだがすぐに効果が出ることは望めない。
ゆえにこちらの方がより現実的であると判断したのだ。

とはいえ浄水場に入ることができないうえ、浄水場の敷地がかなり広いという問題点があった。
マジックアイテムを1つか2つ置いたところでこんな広さ、こんな人数をカバーすることは不可能。
しかも浄水場である以上、大量に貯留されている水をなくすということも不可能だった。
そこでMは職員たちのためにごく一般的な見た目のお守りを作り、それを持ってもらうことにした。
お守りの中にクリアクォーツ(透明な水晶)を利用した「気を集めて浄化する機構」を仕込み、それで守り神の影響を中和しようという作戦だ。

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コメント(1)
  • 水場は怖い。
    よく川や海や湖のすぐ、近くでキャンプとかもしもしてるなぁと思う。

    2022/06/29/01:08

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