消しゴムの持ち主
投稿者:ぴ (414)
私は貧乏だったので、筆記用具もろくに持ってませんでした。
でもいじめられるのが嫌で、貧乏と気づかれないように落とし物をよく拾って使っていました。
けれどその日拾ったものはおそらく拾ってはいけないものだったのです。
その消しゴムを拾ってから私は急に肩が重くなりました。
まだ子供なのに、急に肩が凝るのはおかしなことですが、そのことはあまり気にしてはいませんでした。
それよりも消しゴムを拾ってからたびたび見かけるようになったピンクのゴムで髪を結った女の子が気になってました。
学校でよく見るけど、誰に聞いても「知らない」と言われるのです。なんだかちょっとそれが気味悪かったです。
消しゴムを使っていると、消しゴムのパッケージの下に何か書いてあるのが分かりました。
私は何かのおまじないかと思って、好きな人でも書いてあるのかと見てみたのです。
そしたらその消しゴムには「祝」と書いてあり、がっかりしました。
なんでそんな言葉をわざわざ書いたのかと私はとても不思議でした。
それからすこぶる体調が悪くなって、学校を休むようになりました。
家で体を休めて眠っていたら、なんだか傍らで物音がします。
驚いて目を覚ましたら、あの女の子が家のベッドの横で四つん這いで何かを探していて、びくっとしました。
熱に浮かされながら私は「誰?」って聞いたのです。
そしたら聞き取れはしなかったけど、早口で名乗ってくれました。
「どうしたの?」と聞くとその子は「消しゴムを失くした」と言ったのです。
上げた顔はまるで私が落し物の消しゴムを盗んだことを知っているように恨めしそうでした。
「返して」と言われて、私はその子に消しゴムを返しました。
「ごめんなさい」と咄嗟に謝りました。
目を覚ますと、どうやら夢を見ていたらしく、そのあと筆箱の中を探したらあの消しゴムはまだ返せてなかったです。
翌日体調が悪いのを我慢して、学校に行きました。
そして真っ先にあの消しゴムを落とし物の箱に返したのです。
そしたら体調は見る間に回復していきました。
私はあの消しゴムの文字を思い出して、もしかしたらあれは「祝」ではなく「呪」という字だったのかもしれないと思っています。
漢字が弱かった私は読み間違った可能性があります。
そしてあのピンクのゴムで髪を結った女の子は、もしかしたら私じゃない誰かにあの消しゴムを拾ってほしかったのかもしれないです。
それからというもの私は落とし物を拾って使うことはなくなりました。もう同じ目に合うのは勘弁です。
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