猫の入学式
投稿者:壇希 (11)
「さあさ、お集まりの皆さん、御団欒のところ恐縮ではございますが、しばし私めの方へと耳を傾けて頂きたい」
汚い狐の甲高く喧しい声が大衆に呼び掛けた。各々の場所で宴を楽しんでいた皆の視線が、舞台の上の狐に一斉に向けられる。
「皆さん既にご承知かと存じますが、改めて紹介仕ります」
そう言うと、狐は振り向きもせず背後に手招きをし、舞台袖にいる私に上がってくるよう促した。
しぶしぶ舞台をよじ登り、狐の横に立ち皆を見下ろすと、途端に夜の集会所は割れんばかりの拍手に包まれた。
「我々の村から、実に四百年ぶりに入学生が出ることになりました。りとさです」
狐に促され、私は小さく頭を下げた。再び集会所に拍手が起こった。
「皆々様のおかげを持ちまして、今日で七つになりました。明日からは晴れて小学生でございます」
何がそんなに嬉しいのか、舞台を囲んでいた鹿や猿が、やんややんやと踊り出した。
一升瓶の酒を瓶ごと煽り、自治会長の猪が変な節回しの演歌を唄っている。
どうすれば良いのかわからず狐を見ると、とろんとだらしなく溶けた表情で、ふらふらと盆踊りをしている。恐らく舞台に上がる前から、しこたま飲んでいたのだろう。
仕方なく私は、一人で舞台の後ろへと飛び降りた。
頭上には大きな烏が一羽旋回している。その奥に見える空は赤い。
「大っきくなったねぇ。ランドセル背負って、いっぱいおべんきょして、先生の言う事しっかり聞くんだよ」
誰の声かと辺りを見回すと、丸々と肥えた狸が、寝転がりながら私を嬉々とした目で見上げていた。
足下に転がる狸を、私は何となく蹴ってみた。狸は緩やかな坂を音もなく転がっていく。
後悔などはしなかったが、ごろごろ転がっていく狸を見ていると、何だか泣きたくなってきた。
「こんな所にいたのね。ほら、戻りますよ」
上を飛んでいた烏が、突然私の肩に乱暴にとまり、早口で私を捲し立てた。
私の周囲に烏の艶やかな黒い羽が散らばった。
作者がこえーよ
風変わりな作品で中々面白かったです
なんの比喩かわからない。
作者の闇を感じる。