嘘と真実
投稿者:りばお (1)
お盆の時期だった。そう多くはない親戚一同が田舎の本家へ集い、法事や供養なんかを済ませた後の事。
その後の会食もそぞろに、俺は歳の近い従姉弟達と各々が知っている『怖い話』を持ち寄って座敷部屋で披露し合っていた。
なぜそんな話題へ至ったのかは覚えては無い。けれど、自分等の親世代とそのまた親世代達が盛り上がる話の内容に、俺を含めた若い従姉妹達の興味が無かった事は確かだ。
「それでね、血だらけの女がこっちを見てたんだってさ」
俺の従姉にあたるユメ姉が会社の先輩から聞いたと言う話を語り終えた。「大学時代に友達等と廃墟に行った帰り道での出来事」と、まぁそんな所だった。
「え……怖ぁ」
「ユメ姉ちゃんの話やばいね」
「…………」
そんな話を聞き終えた従妹のミクは肘を抱く様に肩を強張らせ、従弟のショウタは少し顔を引き攣らせていた。高校生と大学生には十分な程怖い話だったらしい。中でも最年少の従妹に当たる中学生のナオに限っては無言で耳を塞いでいた。
「最後は俺の番だな」
俺の順番が回ってくる。これまでと言えば、友達から聞いた話だったり、何処かで聞き覚えのある話だったりと、言うのならどれもありきたりな話だった。
だから、俺が知る限りで一番怖い話をする事にしたんだ。
「じゃ、俺が体験した不思議な話をしようか」
俺が暗澹と告げると、従姉弟達がそれぞれ面白い反応を見せる。食い入り気味に「見たことあるの?」とか、「絶対怖いやつじゃん」とか、話を聞く側としは100点満点の反応を見せる従姉弟達をもっと怖がらせてやりたくなったとも言おうか、我ながら意地悪おじさんの才能があると思う。
「まぁ、言うてそんな怖くないよ」
俺はお約束のように笑う。
もちろん、この話を披露するのは従姉弟達が初めてじゃない。友達や職場の人、中でも酒の席だったり等々……色々な人の反応を見る限りで一番手応えのある心霊話だと思う。
俺はそう言ったオカルトや心霊話の類が好きで、少なくとも既に話を終えた4人の従姉弟よりもホラー系の引き出しが多い自負はあった。より怖い話を聞かせる自信があったんだ。
今回も同様、怖い話ってのは意外と談笑の話題に上がったりするもんで、その度にこの話をするようにしていた。つまり話した分だけ磨きが掛かっている、最恐の怖い話。
「俺が一人暮らしをしていた頃……」
――――実際に体験した話。
◇ ◇ ◇
年月は遡って5年前。当時の俺は19歳で、隣県の専門学校へ通う為に地元を離れて一人暮らしをしていた。隣県とはいえ実家から通わなかったのは、都会に憧れを持つお年頃だったからとでも言おうか。
かなり面白かった!
もっと評価されてもいいような気がするけど