雨の日に現れる口裂け女

小学生の時、口裂け女を見たことがあります。
その日は6月で梅雨ということもあり、朝からしとしと雨が降っていました。
放課後、家が近い子と一緒に帰っていると、後ろから「ねぇ、ちょっとこれを見てくれない？」と、声をかけられたのです。
振り向くと、そこには赤いワンピースを着た、腰まで伸びた黒髪の女の人が立っていました。
女の人は手で口元を抑えながら、私達に向かって「見てくれる？見てくれる？」と、何度も問いかけてきます。
私は怖くなって走ってその場から逃げようと思って、友達の手を引っ張ったのですが、友達は「見たい！」と、答えてしまったのです。
すると女の人は、「ふふふふ、見てくれる？ほんと？見てくれる？ねぇ、見てくれる？」と笑いながら、口元を覆っていた手を外しました。

女の人の口元は、両端が耳元までぱっくり切れていたのです。

私と友達は「く、口裂け女だ！」と叫んで、慌てて逃げ帰りました。
それぞれの家に帰り、家にいた母親に女の人のことを伝えると、すぐに警察に「不審者がいる」と電話をしました。
友達の家でも同じように対応したようで、しばらくの間、学校は集団登校・集団下校になり、夕方に警察の見回りも行われました。

しかし、1ヶ月経っても女の人は捕まりませんでした。
その1ヶ月の間で私達以外に口裂け女を見た子供はたくさんいましたが、それでもです。
7月になって雨があまり降らなくなると、口裂け女を見たという話しは段々聞かなくなりました。
未だに、私の小学校では「6月になって雨が降ると口裂け女が出る」といった怪談が伝わっているようです。