馬鹿にできない「言霊」

私の友人は声優志望です。
しかしプロデビューには程遠く、現在は宅録メインのネット声優として案件を請け負ったり自主制作の動画をアップしています。

そんな友人が新しくやり始めたのが怪談の朗読動画でした。
２ちゃんねるの洒落怖などから話を引っ張ってきて、それを朗読するのです。

友人がアップした動画はそこそこ再生回数を稼ぎ出しましたが、元々漢字に強くない為読み間違いだらけでした。
アパートの内見を「うちみ」、風情を「ふじょう」と読んだ時は本当にあきれました。だからアマチュアどまりなのでしょうが……。

「言霊って本当にあるんだよ。文字には魂がこもるんだから、蔑ろにしちゃばちが当たるよ」

「あんた本気でそんなの信じてんの？うける」

友人は笑って取り合いませんが……
先日久しぶりに会った所、その唇が腫れ上がっていました。どうしたのと驚いて問い質しますが、原因は不明だそうです。医者もお手上げ状態、声はがらがらに掠れて酷い有様です。

帰宅後、友人の動画を再生して驚きました。その時彼女が喋っていたのは、非業の死を遂げた女の悪霊が一族を祟る話でした。
何故友人が祟られたのか悟った私は、即座にスマホを取り上げてメールを送りました。

「あんた、ずっとはるひはるひって言ってるけど……悪霊の名前、かすがじゃない？」

友人は春の日と書いてかすがと読む事を知らず、悪霊の名前を間違い続けていたのでした。