龍神池の生贄
投稿者:誠二 (20)
短編
2022/03/01
18:25
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祖父の田舎には龍神池と呼ばれる池があります。底には深泥がたまり水には夥しい藻に埋め尽くされているので正直池というより沼に近いです。
この池には昔から龍神が住んでると言われており、数百年前には生贄が捧げられていたそうです。昼でもなおジメジメと薄暗い場所にあり村人たちは避けていました。
小4の夏休み、この龍神池に肝試しに行きました。藪を抜けて池に辿り着きぐるりと一周しましたが何もいません。やっぱり伝説は嘘だったのか拍子抜けしました。
さあ帰ろうと回れ右した瞬間異常を感じました。あんなにうるさかった油蝉の声が絶えているのです。夏の盛りなのに……
直後に悪寒が駆け抜けました。足元の地面に巨大な影がさしたのです。何かやばいものが後ろにいる、振り向いたら喰われるに違いないと肌で理解しました。
その時、地面を這っているミミズを発見しました。咄嗟に捕まえて見もせず池に放り込みます。
「生贄をあげるから許してください!」
だしぬけに水音が上がりました。誓ってミミズが落ちた音ではありません、もっと大きな音です。
何が池から飛び出したのか、結局目視しないまま祖父の家に飛んで帰りました。
もし身代わりの生贄を捧げなかったら命はなかったかもしれません。
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