不思議な結婚式
投稿者:足が太い (69)
友人A子から、「結婚式に招待したい」という手紙が届きました。
A子は以前勤めていた職場の元同僚で、当時はそこまで仲良くありませんでした。
一度、A子から「年賀状を送りたいから住所を教えて欲しい」と言われ、とくに断る理由もなかったので教えたんです。
その後すぐA子がその職場を辞めて、私もその後しばらくして辞めてしまいましたが、毎年、年賀状のやり取りだけは続いていました。
仕事は転職しても住所は変わってなかったので、A子からの手紙もいつも通り届いたのです。
でも、A子との関係と言ったらそれくらいで、結婚式に招待される程、親しい訳ではありません。
だから、「仕事が忙しくて結婚式には出られない」と、断りの手紙を送りました。
しかし、その数日後にまたA子から手紙が来て、そこには「友達がいないので、あなたしか招待出来る人がいない。交通費も宿泊費も全て出すし、ご祝儀もいらないので、とにかく結婚式に出てほしい」と書いてありました。
あまりに必死な様子だったので断るのも悪く、お金を全て出してくれるのならと思ってA子の結婚式への参加を決めました。
A子は幼馴染と結婚するらしく、結婚式はA子とその夫となる人の地元で行われるようでした。
A子の地元はH県の海の近くの小さな町で、過疎化が進んでいるのか、随分寂れた印象を感じました。
駅前からタクシーで指定の場所まで向かう途中、タクシーの窓から外を眺めていたのですが、日曜のお昼だと言うのに人1人歩いていません。
「皆、A子の結婚式に参加する為に式場に集まっているのかな?」とも思っていましたが…。
式場であるその町唯一のホテルに到着して、結婚式が行われる広間に入ったのですが、そこにはA子両親・A子夫となる人の両親の、4名しかいませんでした。
広い室内にたくさんのテーブルとイスが並べられているのに、4人と私しかいないことに何だか怪しんでいると、式場スタッフの方の相図で、広間の出入り口から、A子とその夫となる人(B男)が現れました。
A子は黒いウェディングドレスを着て、隣を歩く人の腕に自分の腕を絡ませています。
最初は「ウェディングドレスって純白が一般的だと思ってたけど、こういう色のものもあるんだ」とか「久しぶりにA子を見たけど、随分やつれたなぁ」なんて思いながら、A子とB男がしずしずと歩いてくるのを見ていたのですが、おかしなことに気づきました。
人間だと思っていたB男が、黒のタキシードを着せられたマネキンだったのです。
A子はマネキンの腕を持ち、引きずりながらも上手く前に進んでいます。
よく見るとA子が着ているのはウェディングドレスというより喪服のように見えますし、A子両親・B男両親の服装も結婚式の参加者ではあまり見かけない、全身真っ黒の恰好をしているのです。
幸いと言っていいのか、おかしな部分はそれくらいで、後は一般的な結婚式の進行で、つつがなく終わりました。
結婚式に参加する前は、式の後にA子と少し話せたらと思っていたのですが、よく分からない体験をしたからかドッと疲れてしまい、式が終わると私はすぐ会場を飛び出しました。
このままここにいたら良くないことに巻き込まれる気がして、とにかく早く家に帰りたかったんです。
でも、タクシーに乗り込もうとした時に後ろからA子両親に声をかけられ、無視をする訳にもいかないので挨拶をしているうちに、服を着替えたA子に掴まってしまったのです。
A子「○○さん、今日は遠いところ来てくれてありがとう。素敵なお式が出来て、B男さんも喜んでました」
私「そ、そうなんだ、良かったね」
A子母「本当に良い式で…。A子もB男さんも似合っていたわ」
A子父「最初はB男はどうかと思ったけど、A子とお似合いだったな。2人なら良い家庭を築けるぞ。ね、あなたもそう思いますよね、○○さん」
私「そう、ですね。本当にお似合いで…」
「B男ってマネキンでしたよね?」「ウェディングドレスじゃなくて喪服だったし、A子両親が着ているのも近くで見ると喪服だし、どういうことですか?」とは聞けず、曖昧に濁していると、A子に「××ホテルを予約してあるから、ゆっくり休んでね」と言われ、断る訳にもいかずその日は家に帰るのを諦めて、××ホテルに泊まることにしました。
A子が予約してくれた××ホテルは普通のビジネスホテルで、部屋の窓からは海が見えます。
窓辺に椅子を寄せて、景色に癒されながら外を眺めていると、いつの間に眠ってしまったのか、起きたら19時を過ぎていました。
夕食付のプランを予約してもらっていたので、ホテルに併設されているレストランへ行って夕食を摂って部屋に戻り、お風呂に入ってからベッドでゴロゴロしていると、やけに大きな波音が聞こえてきました。
外はすっかり日が暮れていて、窓の外は真っ暗闇で海の様子をはっきり確認出来ません。
だから、スマホのライトを海の方に向けたのですが…、海の向こうの方に大きな影が動いているのが見えたのです。
フロントマン
正義超人ですね