迎えに来たおじいちゃん
投稿者:峰 (38)
会社の先輩であるRさん(男性)から聞いた、祖父母にまつわるお話です。
今から十数年前のことです。
Rさんのおばあさんは、長年認知症を患っていました。
自宅でご家族が世話をしていたのですが、症状は次第に重くなっていきました。
調子が悪いと他人を認識できなくなり、孫であるRさんだけでなく、実の子供であるRさんの父親に対しても、「あんたは誰だったかねえ?」と尋ねることが頻繁にあったと言います。
ある年の冬、おばあさんの体調が今までになく悪くなりました。
認知症の症状が重くなるだけではなく、食欲が低下してご飯をほとんど食べなくなり、一日中布団の中で寝て過ごすようになりました。
そんな日がずっと続くと、当然身体はやせ細り、筋肉も衰え、自分で歩くこともままならなくなります。
会話をするのも億劫になるのでしょう。家族が話しかけても不機嫌そうに黙り込んでばかりになってしまいました。
医者に診てもらったところ、特に何か病気というわけではなく、高齢化による衰えだろう、と言われたそうです。
当時、おばあさんは90歳を超えていました。
家族は、とうとうおばあさんも寿命が来たか、と覚悟をしたそうです。
時を同じくして、Rさんの家では奇妙な現象が起こるようになりました。
夜中、皆が寝静まったころ、突然玄関のチャイムが鳴るのです。モニターを確認すると、確かにチャイムに反応して録画がされています。ところが、そこには誰も映っていません。誰もいない玄関だけが録画されているのです。
それが何度も続くので、故障かと思い修理します。ところが修理が終わっても、同じ現象が何度も起きるのだそうです。
また、家族全員がリビングに揃っているにもかかわらず、誰ががヒタヒタと歩く音が廊下から聞こえてくることもあるそうです。
足音は、いつも廊下の一番奥にあるおばあさんの部屋まで続き、スーッ、パタン、と襖を開けて誰かが中に入る音までするのだそうです。
その足音はしっかりした足取りで、襖を開け閉めする音もキビキビして聞こえるそうです。どう考えても、ヨロヨロ歩くのがやっとなおばあさんのものではありません。
確認のためにおばあさんの部屋に行ってみると、やはりおばあさんは、たった今廊下を歩いてきたとは思えない様子で熟睡しています。
じゃあ、今の足音は?誰がおばあさんの部屋に入ったの……?と、家族が困惑するということが、週に何度も起こりました。
また、家族がおばあさんの部屋の前を通ると、中からボソボソ……ボソボソ……と、誰かが話す声が聞こえるのだそうです。
ん?気のせいかな?と思って耳を澄ましてみても、やはり、ボソボソ……ボソボソ……と声が聞こえます。
何を話しているのかは聞き取れないのですが、若い男の人が、どこかの方言で喋っているような声なのだそうです。
恐る恐る襖を開けて中を見てみると、その途端、声はピタッと止まります。
そして、部屋の中ではおばあさんが一人で寝ているのだそうです。
こんなことが頻繁に続くので、Rさんの家族はすっかり気味悪がるようになりました。
信心深いお父さんは、「もしかして、おばあさんの死期が近いから、死神が見に来ているのかもしれない」などと言い出す始末。
しかし不思議なことに、これだけ不可思議な現象が起きているにも関わらず、家族の誰一人として「怖い」とは思わなかったそうです。
Rさん自身も、「正体が分からないので気味が悪い」「不思議だ」とは思うのですが、「不幸の前触れかも」とか、「怖いから家にいたくない」などというネガティブなことは全く思いませんでした。それが自分でも不思議だったそうです。
そんなことが続いたある日のことです。
その日、Rさんは前日までの残業が祟って、とても疲れていました。
しかし、他の家族は仕事や用事で不在にしており、おばあさんの世話をするのはRさんしかいませんでした。
眠いなー、疲れたなー、と思いながらおばあさんの部屋に行き、汚れ物をまとめて、掃除をしたり、換気をしたりしました。
そして洗濯物を箪笥にしまっているとき、ふいに強烈な眠気に襲われました。
あ、どうしよう、眠いよー……と思ったのが最後、Rさんはなんとその場で気絶するように眠り込んでしまったそうです。
ホロリときました
あれ、目から汗が・・
泣いちゃう
最初にコメント見て、まさかと思ったけどホントに泣けた
自分の最後もこんな感じだといいなぁと思ってしまいました
いい話しですね。
旦那さんの意思を継いで必死に頑張ったのでしょうね。
感動した
涙腺崩壊。良い話だった。ありがとう。
号泣
素敵すぎる。これは泣く
あれ、涙が・・
途中からもう我慢できませんでした。。涙
固い絆で結ばれたご夫婦なんだなあ。。
あぁー 涙
泣きました。良い話をありがとうございます。頑張って生きぬいたら待っててくれる人がいるってすごく愛しいことですね
遠い終わりの日に
という表現が美しかった
方言も温かく、家族愛、夫婦愛に満たされたお話でした。
我が家のお婆ちゃんは、お迎えに来てくれたお祖父ちゃんを追い返してしまったからなぁ。
?頬が濡れてる
心温まる、じんと来る、いいお話でした。幸せな心優しいご家族ですね。
怖い話じゃなくて泣ける話やないかい。こうやって幸せの中で息を引き取るみたいな最後がいいなって思えた