とある組の死体処理担当
投稿者:イエティ (51)
彼の豊富な知識やしゃべりのうまさは、ある地域のホームレス界隈のトップに君臨していたマツさんという人に気に入られるには十分な要素だった。
マツさんは好きでホームレスをやっていた。
裕福な家庭、十分な教育、親に敷かれた素晴らしい人生へのレール。エトセトラ。
20代の後半には結婚もした。
しかしマツさんは裕福とはいえ平凡な人生に嫌気がさし、もっと多くを学びたい、経験したいという願望の元、全てを捨てて日本一周、当然親には見放された。
自力で生きていくことも可能だった。
いい学歴もあるし、大企業の職歴もある。
しかしある時訪れたこの地域で、貧乏ながらも楽し気に暮らすホームレスたちを見て住み着いたようだった。
多くを学びたい、経験したいという思考が似通っていたことも、彼がマツさんに気に入られた理由の一つかもしれない。
マツさんはホームレスにしては身綺麗な格好をしていた。
その理由は893に気に入られていたからだった。
マツさんが呼びかけをすれば界隈のホームレスたちが動く。
大勢のホームレスたちを日雇いの仕事に行かせ、自治体や会社からの給与をピンハネする。
小さな稼ぎかと思いきや、人数の多さも相まってかなりのシノギになっていたらしい。
その組はZ組とする。
月々でZ組に入る金は500万を超えていた。
マツさんの力なくしてこれは成し遂げられない。
Z組はホームレスたちをまとめたい、マツさんはホームレスたちをまとめる力を持つ上に、裕福なホームレス生活を楽しんでいる。
まさにウィンウィンの関係だ。
そんなマツさんと親交が深まっていった彼は、望み通り893とのパイプを手に入れた。
ここから彼のアピールタイムが始まる。
医学や生物学に精通していることは893にとってメリットがあるのだ。
銃弾で傷ついた組員の治療や、死体処理ができる、といった点だ。
銃弾での怪我は問答無用で警察に通報が行くが、彼が治療を施せばその心配はいらない。
めちゃくちゃ読み応えありました
ヤクザ×心霊
どちらも社会の暗部、アングラな想像力を掻き立てる要素故に、とても相性がいいものですね。
非日常感がいい塩梅に描き出されていて面白かったです。