振り返れば誰も居ない
投稿者:湊 (22)
私が小学生だった頃の話です。
当時の私は学校がとても遠く、家の近くまで一緒に帰る人が居ませんでした。特に問題だったのは友達と別れてからです。そこからの道はとても険しく暗い森が続いていました。低学年の頃は母が迎えに来てくれていたのですが、高学年ともなると母はパートに出るようになり、自力で帰るしかありません。森を通る時はいつも走って帰るようにしていました。
ところが、体育の授業で足首を捻挫してしまったのです。さすがにこの時は走って通り過ぎることはできませんでした。足を引きずりながらも早く通り過ぎたい気持ちで歩いていたところ、突然、真っ暗になったのです。森に入った途端、空気が変わったように感じられました。ザワザワと木々が揺らめき、不穏な空気が漂ってきます。怖くて下を向いたまま、ひたすら足を運ぶしかありませんでした。
すると、後ろから呼びかけられているような声が聞こえてきたのです。怖かったものの後ろを振り返りました。しかし誰も居ません。そこには真っ暗な闇しかありませんでした。
森を出るまでずっとそんな状態が続き、怖いながらもとにかく早く通り過ぎてしまいたい気持ちでいっぱいでその後はひたすら足を速めたことしか覚えていません。
やっと森を通り抜けると、そこには青空が広がっていました。森の中に居た時のような真っ暗闇が嘘のようです。後ろを振り返って森を見てみましたが、思っていたよりも暗くありませんでした。
私が通った時のあの雰囲気は何だったのか、その後も森を通ることはありましたが、その日と同じような状況になることは一切ありませんでした。
妖怪な気がする