Aさんとの和解
投稿者:ジュリー (62)
私がAさんというお婆さんと出会ったのは認知症専門病棟で勤務し始めてからのことです。
明るい笑顔で大笑いするAさんの笑顔が好きで毎日楽しく働いていました。
いつの日からか、Aさんが私を見る度に怒るようになり、お世話どころか、側を通るだけでも物を投げつけられるようになりました。
そんなAさんが亡くなったのは秋になって気温がだんだんと下がってきた夜中のこと。
いつも通り私は夜勤を行いながら、Aさんのご家族に連絡をしたりと準備もしていました。
最期の最期まで睨みつけられていた印象しかなく、少し悲しいなという気持ちも混ざりながら仕事をしていた時のこと。
Aさんからコールがあり、駆けつけました。
Aさんの部屋に入ると本人は息を引き取っており、そのまま医者とご家族が来られて遺体はすぐに引き上げられました。
全て終わったのは朝の6時。
一息ついた時にふとあの時を考えました。
Aさんが亡くなる直前にコールを押したのだと思っていたのですが、よくよく考えるとAさんは危篤状態でコールまで腕が動かせなかったはず。
改めてAさんの部屋を見た時、コールはベッドよりかなり上で結んでありました。
同じく夜勤をしていた人に結んだのか尋ねると、「そんなことをしている時間なんてなかった。」と言われました。
危篤状態にしても、亡くなった後にしても、コールは本人の手元にはありません。
5年近くこの仕事をしていましたが、これまでもこの後も同じようなことはなく、コールが勝手に鳴ったのはあの時だけです。
Aさんが私を呼んでくれたのかなと思い、和解したような気持ちになりました。
睨んでくるのも好きの裏返しとかだったのかな