青い帽子の子ども
投稿者:ユウナ (3)
その瞬間、小高くなった丘から、停まっていた車に向かって、その青い帽子の子供がもの凄い勢いで走って行きました。
まるで、スキーをはいているかのような早さで。車のほうを見ると、灯りは消えていました。
その走り去る勢いは、今思えば、人間の早さではなかったのですが、その時は全員がどういうわけかその事にすぐに気づかなかったのです。すぐに誰かが、その車に近寄る事を言い出しました。
灯りは、スキー場の非常灯だけ。真っ暗闇の中、吹雪は勢いを増していました。
そして、車の灯りは消えています。年少のメンバーは泣きべそ状態。私は懐中電灯を照らしながら、車に近づきました。
車に近づき、フロントガラスから中を覗き込もうとしました。ですが、暗くてよく見えません。
迷っていると、誰かが言いました。この車、廃車だ!と。そんな訳はないのです。さっき灯りはついていたのですから。
また誰かがその事を言いだし、皆怖くなって叫びだして、一目散に泊まっているホテルへと逃げ帰りました。
誰一人として、後ろを振り返ることなく。他の催し事をしている部屋へと着くと、そのことを他のメンバーに話しました。
私たちの話を聞く他のメンバーは真剣でした。それもそのはずです。
他のメンバーも、ちょっとした不思議体験をしたいたのです。
ちょうど風邪ぎみで眠っていた姉が、青い帽子の子供の夢を見ていた、というのです。
夢の内容は、赤い車に青い帽子の子供が乗っていて、スキー場に着く前に事故で亡くなった、というものです。
夢を見ていた時間帯は、ちょうど私たちの不思議体験の時刻。そして、その車は赤かったのです。
年長のグループリーダーも、不思議そうに話は聞いていましたが、結局、偶然の重なりということになりました。
翌日に赤い車はどこにもありませんでした。実際に子供がいて、親の赤い車でどこかへ行っただけなのかもしれません。
実際に、その辺で事故があったという話は聞きません。古いホテルの情報も、それ以上わかりませんでした。
しかし、思い出してみると、そこ子供がその赤い車に走り去った後、もし人間だったなら、車から足が見えるはずなのですが、あるはずの足が見えていませんでした。
実際に子供がいたのか、幻覚だったのか、もしくは幽霊だったのか。
メンバーの中でかなり噂にはなったのですが、はっきりとした確証あるようなものがなに一つありません。あったはずの、赤い廃車さえ、なかったのです。
私たちの怖くも不思議な体験は、一体なんだったのでしょうか。
幼い頃は怖かった体験も、今では笑い話として話しています。スキー場で、今でも青いお帽子を見ると、ついその事を思い出してしまいます。
今はその団体には遠いところにいて、当時の仲間とも一部疎遠になってしまいましたが、幼い頃のいい思い出として、今でも記憶に残っています。
眠っていた姉は、スキー場に行きたかった、と冗談まじりに言っていました。
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