おまご様
投稿者:空穂 (6)
「……お孫様??」
Aが訝しむと、旦那は「違う違う」と笑った。
「孫じゃなくて“おまご様”だよ。俺の家系の……なんていうか守り神みたいなものだよ。ヤバい。本当においでになられたんだ。すぐ爺ちゃんに報告しなきゃ!!」
旦那は明らかに興奮した様子で、Aの手を引いてみんながいる居間へと連れて行った。
Aは頭上に「???」とはてなマークが飛びまくっていたが、旦那は構わず「おまご様」のことをみんなに話した。
すると、全員それはそれは嬉しそうな満面の笑みで「おまご様がおいでになったのか!!!」と大喜びしたという。
特に祖父は狂喜と言っていいほど大興奮で、
「おまご様がやっとおいでになった!そうかそうか!よかった!よかった!今日は酒を出してくれ!儂も飲む!」
とおおはしゃぎだった。
しかし、Aからすると得体のしれない「おまご様」に自分以外の全員が歓喜している状況が意味不明で、言いようのない不気味さを感じた。
取り残されているAに気付いたのか、義父が説明してくれた。
「おまご様っていうのは、この家に伝わる守り神みたいなものなんだよ。座敷わらしをイメージしてくれたら良いんだけど……。小さい女の子の子供の姿をしていて、赤ちゃんが産まれるときに祝福をくれるんだよ。おまご様がおいでになると、この家に繁栄が訪れると言われているんだよ」
Aは、先程見た影の姿を思い出した。
たしかに子供の姿をしていた……。
しかし、座敷わらし??Aは釈然としなかった。
どう考えても、座敷わらしみたいなおめでたい雰囲気ではなかったのだが……。
祖父が満面の笑みを浮かべながらAに言った。
「おまご様がおいでになるのは、実は久しぶりなんだ。◯◯(Aの旦那)が産まれるときには、うまく行かんかったからな。」
「??うまくいかなかった??」
「なあAさん、立派な後継を産むために、あんたに頼みたいことがある。今晩、おまご様がまたあんたのところにおいでになるはずだ。そうしたら、おまご様をあんたの腹に受け入れてほしい」
「えっ???」
予想もしなかったことを言われて、Aは理解が追いつかなかった。
しかし、祖父や旦那や義父はみんなニコニコと嬉しそうな笑顔でAを見ている。
「おまご様は、この家の後継を孕んだ女性の腹に入り込み、祝福をくださる。あんたと、後継のためだから、よろしく頼むよ」
あの影がお腹に入ってくる??赤ちゃんがいるお腹に???
この人たち、本気で言ってるの?
Aは、そんなのはあり得ないし絶対に嫌だと思った。
しかし、それを口にすることができない雰囲気だったという。
Aは冷や汗をかきながら、ゴニョゴニョとその場を誤魔化して取り繕った。
夜になり、A一家は客間に布団を敷いて寝ることになった。
Aは気が重かった。
それとなく旦那に、
「あなたはおまご様を見たことがあるの?」
と尋ねると、
「いや、俺は見たことない。でも、父さんや爺ちゃんが話してるのは何回も聞いたことがある。今回Aが本当におまご様を見たから興奮してる」
と返ってきた。
「さっきお爺さんが言ってた、あなたのときはうまくいかなかったってなんのこと?」
と尋ねると、旦那もうーんと顔を顰めながら、
「俺もそのことはよく知らないんだけど、俺の母さんが俺を妊娠してるときにおまご様がうまくおいでにならなかったんだってさ。爺ちゃんは、父さんと母さんが離婚したのは、おまご様がおいでにならなかったせいだって言ってるけど」
なにこれめっちゃ面白い
正体が気になる
やはり悪霊の類なのだろうか
得たいの知れないものが入ってくるのを拒否出来るなんて凄い精神力ですね。
ハイレタ…ハイレタ…
座敷童子の可愛い子なら受け入れたかも知れないけど、そんな悪霊のような妖怪は拒否するのが一番ですね。
旦那さんの母親もも同じ経験したのだと思います。
恐ろしい状況に置かれながらも努めて冷静に対処する姿が素敵だと思いました。
そして怖い。
最初おかっぱの女の子と思ってたのは潰された頭部が髪型のように見えた…
ということだろうか
祖母がおまごさまをお腹に受け入れた際、赤ちゃんは外に掻き出されて潰れた姿となり、妊婦のお腹に入ろうとする悪霊になったのだろうか?
母は強し。
最初は本当に座敷わらしのような福を呼び込む存在が加護を与えてくれたんだろうけど、それから「もう一度祝福をください」みたいな事を願って、その呼び声に福を与えた者ではなくタチの悪い悪霊みたいなのが来てしまってそのまま棲みついたんじゃないかな。そんでまだ自我の薄い赤ちゃんの体を乗っ取っろうと虎視眈々と狙い続けてる。今は母親が全員その存在を拒絶してるから乗っ取りに失敗してるけど、乗っ取りに成功してしまったり福ではなく災いを招くーーとかいう妄想をしてしまう。
母親が離婚したがる気持ちもわかる
御家が発展するための生贄なんでしょうな
>最初は本当に座敷わらしのような福を呼び込む存在が加護を与えてくれたんだろうけど
このコメントの方、すごい! 是非、一本書いてください笑
男が呑気で勝手でどうしようもないな
根拠の無い物を福と信じるバカには方便で対応でいいよ。
「昨晩おまご様と話しました。福を授けるには男達が客間で寝ること。妊婦は家の中に居ないこと。」
「そげなバカな・・」って言われたら
「では今晩おまご様にそう話しますがよろしいですか?」で返せる。
つまり、堂々と家から脱出できる
魚が腐ったような生臭い匂い…
これは絶対に良くないものだと思います。
おまご様の正体は守り神などではなく、悪霊や魔物の類いでしょうね。