トス。トス。トス。
足音はゆっくりと、しかし確実に階段を上ってきました。
恐怖のあまりガチガチと歯を鳴らして震える私を、姉は守るように抱き締めました。
トス。トス。トス。
気のせいだと思いたくても足音は止まりません。
「大丈夫。大丈夫やから。」
自分自身にも言い聞かせるように、姉は何度も呟きます。
手足に力が入らず、冷たくなっていくのを感じました。
トス。トス。トス。
もう駄目だ。
そう思った次の瞬間、
ガチャ。
「ただいまー!」
家中に、明るい声が響き渡りました。
兄が、帰ってきたのです。
途端に階段を上る足音はピタリと止み、冷や汗となって流れ出た体温が戻ってきました。
「あれ、誰もおらんの。はー疲れた。」
兄の間抜けた元気な声を聞くや否や、私も姉も力が抜けてしまい、その場にへたり込みました。
「よかった。ほんまに、死ぬかと思った。」
「ほんまに。姉ちゃん、ありがとう。」
放心してしまうほど安心した私たちは、何も知らない兄を手厚く出迎えました。
話を聞いた兄は1階からお茶を持ってきて、私たちを落ち着かせてくれました。
おかげで恐怖は薄れていき、震えも収まりました。
それからは3人で、なるべく気が紛れるようにゲームやお喋りを絶やさないようにしながら
両親が帰ってくるのを待ちました。
ほどなくして母が帰宅したので、その日起こった出来事を話しました。
はじめのうち母は半信半疑の様子でしたが、
「うちって、裏が神社やろ?ヒトのご先祖さんがおる墓地と違って神社に居はるんは神様やから、
もしかしたらちょっと怖いのが住んではるんかもしれへんね。
まぁうちはちゃんとお参りとかしてるし、家間違えてしもただけやろ。」
と話してくれました。


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。