取り憑く黒い影と女の子

だけど、ほかのクラスや学校の先生に聞いても、
そんな女の子は知らない、分からないと言う。

やっぱり違う学校の、全然影に関係ない子だったんじゃないと
友達が言う。

私があのときあった女の子は、本当にただの女の子で、
黒い影に会った子は他にいるんだろうか。

私はあのとき、隣を通り過ぎた。
その時ほんの少しだけ彼女たちと手が触れた気がする。

あの時はそんなことを考える余裕もなかったけれど、
今思い返せば、そうだった気がする。

そして彼女の手は、冷気を発しているみたいに
冷たかったんじゃなかったか。
それで私は、走って逃げたんじゃなかったか。
なんとか記憶を呼び起こそうとする。

そこまで考えて、なんだかそれ以上考えてはいけないと思った。
そうして私はそれ以来、友達とも約束してこの話を

詮索したり、考えるのをやめた。

今のところ、10年経っても私は元気に生きている。
黒い影なんて本当は見てないのかもしれない、
子どもの想像力だったのかもしれない。
怖がっていたから、幻覚を見たのかも。
今になってみればそうかもしれないと思う。

ただ、一つだけ問題というか、疑問があって、
つまりそれは、その日一緒に黒い影を見た友達が
次の週に交通事故で亡くなったことだ。