中学生の時の、どうしても忘れられない全校遠足がある。これはその時の体験談だ。
俺は、というかクラスの連中は、正直遠足なんてどこでもいいと思っていた。
事前にプリントが配られていたから、開催日と時間と用意するものさえ分かっていればよかった。
遠足当日の朝、全校生徒が校庭に集まり、先生の説明が始まった。
「…目的地は〇〇霊園です…」
先生のハンドスピーカー越しの声は、生徒たちのおしゃべりにかき消され、良く聞こえなかった。
俺には「霊園」と聞こえたが、まさか墓地に行くのか、それは聞き間違いかと思っていた。
生徒たちは手配していたバスに順番に乗り込み、次第に出発していった。
バスは、だんだんと景色のいい山道へと進んでいった。
この道は見覚えがあるぞ?と思いながらも、まさかな、とも思っていた。
というのは、この道は俺の親族の墓がある某霊園へ行く道だったからだ。
俺の弟は、小学1年生のある日、飲酒運転の車に轢かれて死んだ。
何しろ急な事だったので親族の墓に入れてもらっていたから、お盆の時期には墓参りをする習慣があった。
しかし、今回はお盆の時期以外では初めてお墓に行くことになってしまったのだ。
この霊園は、墓地エリアと公園エリアが隣接していて、生徒たちは公園エリアに集まった。
午前中はクラス対抗伝言ゲームとか特に面白くも無い行事があり、昼食の時間になった。
午後は自由時間で、グループごとに自由に遊んでいい事になっていた。
引き続き公園で遊ぶグループ、近くを散策するグループ、皆それぞれに分かれた。
俺たちのグループも他のグループと一緒に鬼ごっごなどしていたが、それも飽きてきた。
そこで俺は、ちょっと行きたい所があると言うと、グループの一人が
「行きたい所ってどこだよ。」
と聞いてきたから、
「弟の所だよ。」
と答えると、不思議そうな顔をしたから、
「行けば分かるよ。」
とだけ答えて、墓地エリアへと案内し、数分歩いて親族の墓に着いた。
「ここだよ。」























シンプルな体験談みたいですき
振り向いても良かったんじゃないかと思う
生前でよっぽど基地外な人間でもないなら害を起こすわけでもないんだし
切ないよう…
住む世界が違うんだ。
これでよかったんだよ。