庭を彷徨う黒い影
投稿者:ぴ (414)
私は中学生の一時期、登校拒否で学校に行っていませんでした。原因はグループ内でのいじめだったのですが、家に引きこもって誰とも合わずに数日過ごしたこともあります。そんなときだからこそ、私はこのゾクゾクする体験をしたのです。
母はすごく草花を育てるのが好きな人で、庭は花だらけでした。その影響もあり、よくお隣さんが庭の花を見に来たりしてました。中には母がいなくても無断で庭に入って勝手に庭の花を眺めていくちょっと不躾なご近所さんもいるくらいでした。でも母はあまりそういうのを気にしない人で、「あの人が昼間に勝手に庭に入ってきてたよ」と言っても「そうなの~」と気にしない人なのです。
そんなときに私はよく見るご近所さんを目撃しました。その人は毎日のように誰もいなくても無断で庭に入ってくる人で、「あー、また来たよ」と私は窓から見えるその黒い影にげんなりしていたんです。いつものように髪を一つに結っていて、よく着ている黒色のジャージ姿で、見間違いようがなくそのご近所さんでした。その人はしばらく庭を見て回ったかと思うと、少し名残惜しそうな感じで去っていきました。
しかしその日の夜、いつものように母にそのことを話して聞かせたら母は真っ青でした。いつもは笑い飛ばすくせに今日はどうしたんだろうと不思議に思っていたら、母は言ったんです。「何バカなことを言ってるの?その人この間亡くなったわよ!」と。驚きでした。
そういえば、お葬式に行ってくると言って出て行った日がありましたが、その人のものだとは知りませんでした。そんな年齢ではなかったのですが、癌で早くもこの世を去ったらしいのです。
私はその日から家にいてまたその人を目撃してしまったらと思うと怖くなって、積極的に学校に行くようになりました。あの日私が見たご近所さんは死後も庭を見たかったのでしょうか。背格好も髪型も服装も間違いようもなくその人だと思ったので、ご近所さんはもしかしたらまだこの辺を彷徨っていたのかもしれません。
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