奇妙な体験をしたことがあります。あれは確か蝉がみんみん鳴く夏真っ盛りな8月の半ばでした。
当時、私はあまり褒められたことではないのですが、トイレで漫画を読む癖がありました。
夏なので暑いのですが、丁度いい具合に窓からそよ風が入ってきて、涼みながらトイレに座っていました。
そしたら突然出口のドアの方が「ガタン」と揺れたのです。最初は誰かが外からトイレの戸を開けようとしたのかと思いました。しかし、よく考えたらその日は父も母も妹も祖父母の家に出かけたのです。つまり今は一人で留守番中で、家には自分一人しかいません。
「え?」と怖がっていたらまたドアが「ガタン」と外から一回押されたように揺れました。そこで私は気が付いたのです。丁度対角線上に窓があり、外から気持ちいいそよ風が入ってきています。おそらくこの風のせいでドアが少し揺れたんだなと納得し、一安心しました。
しかし、自分なりに納得してまたもや漫画に目を落とそうとした瞬間にトイレのドアがガタガタガタガタガタガタガタンとすごい勢いで揺れ出したのです。
それはまるで外から何者かがドアをこじ開けようと力技で揺らしているくらい凄かったです。尋常ではない音に驚いて、私は恐怖に身を竦ませました。例え突風が吹いてもここまでドアは軋まないと思うし、明らかに窓からのそよ風の影響で起こるドアの軋みではありません。
思わずしばらく固まってしまった私ですが、おそるおそるトイレのドアを開けてみました。案の定外には誰もおらず、呼びかけても誰の返事もなく、玄関もきっちり閉まっています。確認したけど、やはり家にいるのは私一人でした。それからはもう走って二階の自分の部屋に閉じこもりましたね。そして家族が帰ってくるまでトイレには一度も行けませんでした。
結局誰にその話をしても、風なんじゃない?と笑われてしまうのですが、私はあれは明らかに風じゃなかったと思っています。自宅のトイレでこんな体験をしたのはこの一度っきりで、あの日私と入れ違いでトイレに入ったものが窓から外に出て行ってくれたことを願います。























トイレの神様じゃないかな?