登山遠足で
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
5人は顔を見合わせて「行こう」と合図し、少し遅れてその男の後を付いて行った。
そこは、僕たちがここまで通ってきた道だった。
「あれ?さっきの人は?」
木々に紛れて、いつの間にか男の姿は見えなくなっていた。しかしそこには登山道の標識があり「展望台はこちら」とあった。
さっきの男は多分山を下りるところで行き先が違うから、もう見えなくなったのだろうと皆は勝手に想像した。
標識に従って登っていくと、ものの数分で展望台の入り口に辿り着いた。
「さっきのは何だったんだ…?」
5人はあっけに取られ、何かに騙されたのか、誰かに導かれたのか、この時はそう思うしかなかった。
ふと全員が我に返ると、Cは自分の時計を見て
「今11時10分だ。ちょっと遅れたな。」
展望台の入り口には高さが4~5メートルの鉄柱があり、上には大きな時計が付いている。針は11時ちょうどを指していた。
その時計台の根元には先生が立っていて、登って来る生徒たちを待っていた。
「先生すいません、途中で迷って遅れてしまいました。10分くらい遅れました。っていうか、この時計遅れてますよ。」
Cはそう言うと、先生は自分の時計と上の時計を交互に見て
「いや、合ってるぞ。今ちょうど11時だ。その時計が進んでるんじゃないのか?」
「いや、そんなはずは…。」
Cはそう言いかけたが、もう点呼が始まっていて急いで集合しないといけなかった。
急いで最後列に座って他のグループとお互いに時計を見せ合うと、僕達5人の時計だけが10分進んでいた。
めっちゃ面白かった!
気に入っていただいてありがとうございます。
あと、誤字等ありましたので修正しました。
作者より