バックミラーに映るおじさん
投稿者:ロジハラ (5)
これは私が16歳の時の話です。
毎晩のように不良仲間とつるみ、飲酒喫煙やバイクなどで暴走行為を繰り返し、警察のお世話になったこともたくさんありました。高校一年生の冬になりかけのある日も、いつもと同じように不良仲間と夜中まで騒いだ後、いつもと同じようにビックスクーターで明け方の道を、一人で帰路についていました。
私が住んでいたのは大阪府なのですが、大阪の下町で、そんな時間には誰もいません。自分のバイクの音だけが響きます。
通い慣れた道でも、その日はなぜか不気味に感じました。
小さいころから霊的なものへの感性が強い私は、遠回の線路沿いの道を使って帰ることにしました。線路沿いには家も多く、人の気配を少しでも感じたかったからです。
線路沿いにゆっくりバイクを走らせていると、バックミラーに自転車に乗ったおじさんが映りました。さっきまで人が一切いなかったので、びっくりもしましたが、人がいるという事を感じることが出来て少しホッとしました。しかしホッとしたのも束の間、私はあることに気が付きました。
おじさんとの距離が開かない。
もちろん私はバイクに乗っていたのでゆっくりと言っても自転車よりは断然早いはず。ミラーに映るおじさんも一生懸命漕いでいるような感じではなく、こちらを気にもしない様子でゆっくり自転車をこいでいるだけでした。
薄気味悪く感じた私はアクセルをひねり、スピードを上げました。しかしそれでもミラーに映るおじさんとの距離は一向に開きません。後ろを振り返ってよく見てみると。そこから急に私の方を無表情で見てきます。
私は怖くなって、ミラーと後ろばかり見ていると、頭の中に「あぶない!」と声のようなものが響きました。
反射的に急ブレーキをかけ、前を見るとそこは行き止まり。コンクリートの大きな壁が。
ギリギリでバイクを止め、荒れる呼吸で後ろを振り返ると、そこには誰もいませんでした。
おじさんも、あの時の声も何だったのか分かりませんが、一つ言えることはその声が無ければ、私はバイクで壁に激突していたでしょう。
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