長屋のお風呂
投稿者:ロジハラ (5)
大阪のとある下町の長屋で私は小学生時代を過ごしました。狭い長屋で母と兄と祖父と私の四人でお金には苦労しましたが、笑顔の絶えない家庭でした。発端は私が小学校5年生の頃、何日も続けて同じ夢を見た事に始まります。大人になって分かったことですが、これは結構よくあることらしいですね。しかし、そんなことを知らない小学生の私は、その不思議な体験が印象的で、今でもその夢を覚えています。私たちが住む長屋には無いはずのお風呂に一人で入っている夢で、浴槽に浸かっていると、知らない人が入ってくるという物です。それも、幽霊的な何かではなく、家族の様に自然にその人はお風呂に入ってくるので、いつも恐怖ではなく、不思議な感覚になって目が覚めていました。
時が経ち、大学生になった私は一人暮らしをするべく、大学近くの賃貸を内見しに行きました。外見からは築年数をしっかり感じ取ることができ、オシャレとは言い難い物件でした。案内されてたどり着いた部屋の扉は簡単に蹴破れそうな引き戸で、玄関に入ると古い家独特の匂いがします。「懐かし~」と思いつつ中へ入るとビックリしました。あの夢に出ってきたお風呂と全く同じお風呂でした。これは正直、視覚的な記憶ではなく、感覚的記憶からそう感じました。怖かったわけではありませんが、体中鳥肌が立ちました。
結局私はそこではなく、その近所にもっと好条件の部屋を見つけたためそこに住む事になりました。そこから数カ月が経ち、一人暮らし荷もやっと慣れてきたころ、例のアパートの前に沢山の警察車両が来ました。その時は無視しましたが、後から聞いた話ではそこの部屋に人が住んでいないことを良いことに、その部屋に上手く侵入して薬物をやっていたそうです。
もし私が住んでいたらと思うと初めて恐怖を感じました。あの夢は何らかの暗示だったのでしょうか。時間は無始無終と言いますが、そう考えると時間は軸の様に二次元的に未来へと向かっているものではなく、もっと上の次元でとらえる事が出来るのではないかと感じました。
つまり各人の人生の台本があって稀にアドリブで別シナリオに行けるって事かな。