み い つ け た
投稿者:STRIKE (5)
その日はとても良い天気でした。
眩しい日差しに目を細めながら、私はやっと慣れてきた車に友人を乗せてドライブしていました。
助手席に座る友人と、どこへ行こうか、何を買おうかと他愛もない話をしながら、交差点に差し掛かりました。
信号は青でしたが、その交差点は車が多く、見晴らしも余り良くない場所であったので、いつもよりゆっくりとした速度で私は進みました。
助手席の友人は元気に色々話していたが、その声がふと止んで、ふっつりと黙り込んでしまいました。
何だ?と横目で隣を見ると、友人の顔は窓の向こうをじっと見つめていました。
「どうした……」
どうしたの、と聞きかけて、私も口を噤んでしまいました。
友人の視線の先に居たのは、一人の女性です。信号待ちをしているのでしょう、歩道に立っているその女性。
その女性が見えていたのは交差点を過ぎる約数秒の間でしたが、私たちは女性から目を離す事は出来ませんでした。
眼鏡を掛けているとはいえ、その女性はやけにくっきりと私の視界の中で鮮明に映っていました。
女性の顔は、ゆっくりゆっくりと私たちの方を振り向いたのです。
にやぁ、と笑ったままの顔が、ずっと私たちを見ています。
「・・・あの人、知ってる?」
「・・・知らない」
交差点を通り過ぎた後は、何とも言えない空気が車内を漂っていました。
女性の笑みが、目蓋の裏に今でも残っています。
その女性は、私たちを見つめたまま口だけで、確かに言ったのです。
「み い つ け た」と。
何を見つけたのか、考えたくもありません。
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