古い旅館と創業者の霊
投稿者:イエティ (51)
Sが語り終えると、俺はこういうサイトで読んだ怪談を話してやった。
さすがに旅館系や海系の怪談は話せず、真逆?というか全く関係のない学校で起きた話とか神社の話をしてた。
やっぱりこういう話した時には寄ってくるって言うから、誰かが怪談を話すごとに寒気を感じるようになってた。
気温による寒さとは違う、背筋が震えるような悪寒。
そしてTが旅館系の怪談を話し始めた。
ふとTの背後に何かが動いたのが見えた。
俺は縁側の一番手前の椅子に座っていて、Tは一番奥に立っていた。
Sは俺らの間に地べたに座っていた。
Tの背後は特に何もなく、明かりもはっきりついている。
猫が横切れるような場所も無いし、ついに心霊現象が起き始めたのかと思った。
俺はTの背後から目が離せなくなった。
縁側の突き当りのただの白い壁に、何か黒い靄がある。
シミとかじゃなくて、黒い靄が蠢いてる。
Tの話は耳に入ってこず、ただその黒い靄を見つめていた。
3分ほど経っただろうか、Tの話は終わったようで、次はSが話し始めていた。
段々、黒い靄が大きくなっていることに気付いた。
怖いなと思いつつも、なぜか立ち上がる事も、「部屋に戻ろうぜ」と口にすることもできない。
金縛りのような状態で黒い靄をずっと見ていた。
さすがに様子がおかしいと思ったのだろうか、SとTが俺の名前を呼んでいる。
そこでもう一つ、俺は間違いに気づいた。
黒い靄は、徐々に大きくなっているのではなく、俺たちに近づいているのだった。
ぱっと金縛りが解け、
「部屋行くぞ!!!」と俺は叫んだ。
ただ事じゃないと察した二人と一目散に走った。
部屋につき、「何か見えたん?」と二人に聞かれ、俺は目撃した黒い靄について二人に話した。
するとTが「そこにも見えてない…?」とおびえた表情で扉の方を指さした。
振り返ると、確かに黒い靄が、部屋の入口にある。
徐々に徐々に近づいてくるはっきりと目視できる靄は、明らかに現実で、そしてこの世のものではないように思えた。
幸いこの部屋は1階で、窓から逃げ出すこともできる。
だが、逃げ出そうにも窓から出た先は、さっきドンっと窓を叩いた”何か”がいるはずの中庭だ。
入り口は黒い靄、窓を出ても”何か”がいる。
俺たちはもうどうしようもなくおびえていた。
上手いなぁ、最後に残る正体不明の恐怖、好き