ドアは、なぜか開けっぱなしになっていた。
隙間から、薄暗いキッチンが見える。
少しだけ躊躇したものの、私たちは家の中へ足を踏み入れた。
電気はついていなかった。
恐る恐る、部屋の中を見渡す。
そのとき物音がした。
「ワン!」
聞き覚えのある鳴き声だった。
コロだ。生きている。
「コロ!」
Rちゃんは安堵したように名前を呼び、駆け寄った。
暗がりの中で、コロが尻尾を振っている。
そんな二人を見ていた私は、ふと顔をしかめた。
鼻をつく、嫌な臭いが私を襲った。
「うっ……何これ」
形容し難い悪臭に思わず顔を背けた。
臭いのする方は、コロのさらに奥だった。
暗がりに、何かが横たわっている。
最初は、それが何なのか分からなかった。
グッと目を凝らし、少しずつ暗闇に目が慣れていく。
そしてそれが何なのか理解した瞬間、私は絶句した。
「嘘……」
顔はよく見えない。それでも分かった。
おばあちゃんだった。
私はその場に崩れ落ちた。
そのあとのことは、ショックのせいか、ほとんど覚えていない。
あれから五年が経った。
すっかり大人になった私は、ふとあの日のことを思い出した。
いや、思い出したというより、ずっと心のどこかで考え続けていたのかもしれない。
忘れた日なんて無かった。
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