ただおかしなことが何点かあった。
まず初期救助に当たった船頭本人があの男の子が岸に上がっていないことにいち早く気づいた。しかし岸に上がった人の中で誰も我が子がいないと探している人はいなかった。
船頭の発言をもとに警察はA川全域を捜索したが男の子やその所持品などが全く見つからなかった。
また渓流下りのチケットの販売履歴を照会したところ子供のチケットは1枚も売れていなかった。
もちろん乗客全員に確認したが誰も子供を連れて来てはいなかった。
次に下流で櫂が回収されたんだが、櫂の柄の部分にはべっとりと粘つくものが付着していて生臭いような異臭を放っていた。これは最終的には川底のヘドロや微生物のようなものだろうとして処理された。
結局男の子の存在については船頭や乗客は川に落ちたことで記憶に混乱が起きているだけでそんな子は初めからいなかった、船頭が過失で櫂落としてしまったことに起因する事故と結論付けられた。」
「船頭さんに全て押し付けたんだ・・・。」
「おいおい人聞きの悪いことを言ってくれるなよ。たしかに船頭の業務上過失傷害の線で捜査は進んだが最終的には不起訴となっている。不起訴の理由は公開されていないがな。」
「その謎の男の子については深く捜査しなかったの?」
「お化け退治は俺たちの管轄外だからなぁ。」
「正体不明の子供船幽霊かー。怖いね」
「まあそういうものがいようがいまいが川は危ないものよ。毎年200〜300人が川の事故で亡くなっているんだからな。お前も気をつけろよ。」
「300人か、すごい人数だね。その内何名が何物かによって引き摺り込まれたんだろう?」
「くだらんことは考えなくていい。大事なのは安全意識と危機管理だ。」
「了解。ゆめゆめ気をつけるよ。」
お店を出て叔父さんをホテルの最寄駅まで送り、1人帰りながら考える。
自分の知らない世界に触れた興奮と同時に疑念もあった。
叔父さんは真剣に話していたが今日聞いた話は本当のことなのだろうか?
もしかしたら叔父さんの口から出まかせ、あるいは実際の事故を膨らませて適当に作った話の可能性はないだろうか?
まあいずれにせよ今は確認のしようもない。
きっと他の話も聞ければ判断がつくだろう。
さあて、叔父さんを次に招待するお店を探さないと。

























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