人から、
「すみません」
と声をかけられることだ。
昼間の駅でも。
大学の構内でも。
街中でも。
普通の人が、
「すみません」
と僕に話しかけてくる。
僕は普通に振り返る。
そこには、
道を尋ねる人。
落とし物を拾ってほしい人。
何かを聞きたいだけの人。
誰かに「すみません」と声をかけていた人。
普通の人がいる。
それでも、
「すみません」
という声を聞いた瞬間だけ、
あの日の光景が一瞬で蘇る。
午前3時前。
誰もいない店内。
鳴らない自動ドア。
鳴らない呼び鈴。
そして、
飲料ケースの向こうから聞こえた
「……すみませーん」
という声。
僕は一瞬だけ、
相手の顔を見る。
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