## 六、祟り
「昔からね、うちの家系には、良くない巡り合わせがあるのよ」
母がそう切り出すと、それまで黙っていた父が、重い口を開いた。
「俺には昔、妹がいた。お前にとっては伯母にあたる人だ」
初めて聞く話だった。父の口から、きょうだいの話が出たことなど、これまで一度もなかった。
「その人は、どうなったの」
父はしばらく黙り込んでから、ぽつりと言った。
「家族に、殺された。……いや、正確に言うと、家族全員で、そうすることに決めた」
私は返す言葉が見つからなかった。
「詳しいことは、俺にもよくわからない。子供の頃のことだったし、大人たちは誰も、本当のことを話してはくれなかった。ただ、家のために、そうしなければならなかったんだと、そう聞かされて育った」
母が後を継いだ。
「それからよ。T家に、悪いことが続くようになったの。生まれた子が、育たなかったり。原因不明の病気が出たり」
「それが、祟りだって言うの?」
私が聞くと、母は静かに頷いた。
「巫女さんに見てもらったこともあるの。あんたが生まれるずっと前にね。この家は、一度失ったものを、ちゃんと迎え直さないといけないんだって。じゃないと、また同じことが繰り返されるからって」
「迎え直す……」
「昭一はね、そのために、生まれてきてくれた子なの」
母の声は、恐ろしいほど穏やかだった。
「あの子が、伯母さんの代わりに、家に戻ってくるための役目を、背負ってくれるはずだった。でも、途中でうまくいかなくて。だから今度は、あんたの番が回ってきたんだと思う」
私は、自分の家族が、何百年も続く歯車の、ただの一部品のように扱われていることに気づいた。
「私の番……?」
母は、答える代わりに、ただ優しく微笑んだ。
それが、これまで見た母の表情の中で、一番恐ろしいものだった。
## 七、その夜
その晩、私は昔使っていた自分の部屋に布団を敷いて寝た。両親の話を聞いたあとで、とても眠れる気がしなかったが、目を閉じているうちに、いつの間にか意識が薄れていった。
ふと目が覚めたのは、深夜だった。
部屋の中は真っ暗だった。けれど、襖の隙間から、廊下の常夜灯の淡い光が一筋差し込んでいる。私はその光の中に、誰かが立っているのに気づいた。
輪郭だけで、それが誰なのかわかるはずもなかった。それなのに、私は確信していた。























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