昭一だ。
背丈は、私と同じくらいだった。中学生か、高校生くらいの体格。顔ははっきりと見えない。それなのに、その顔がどこか自分に似ていることだけは、なぜかわかった。
私は声を出そうとしたが、喉が張り付いたように動かなかった。
その人影は、ゆっくりとこちらに顔を向けた。顔の輪郭の中で、目のあたりだけが、少し暗く沈んで見えた。まるで、そこだけ影が濃く溜まっているみたいに。
そして、その口が動いた。声は聞こえなかった。けれど、唇の形だけで、何を言っているのかがわかるような気がした。
――代わって。
一瞬、視界がぶれた。まばたきをしたのか、意識が飛んだのか、自分でもわからなかった。
次に目を開けたとき、襖の前には、もう誰もいなかった。
廊下の常夜灯の光だけが、さっきと変わらず、同じ場所を照らしていた。
私は布団の中で、朝まで一睡もできなかった。
## 八、今も
あれから、もう半年以上が経つ。
実家にはあれ以来、あまり顔を出していない。両親からは、たまに連絡が来る。「昭一もあんたのこと、待ってるからね」――そんな一文が、何気ない近況報告の最後に添えられていることがある。私は、その部分にはいつも、既読をつけるだけで返事をしない。
恋人とは、今も一緒にいる。あの日、電話越しに聞こえた「こんな奴でいいのか」という声のことは、結局、一度も話していない。話さなくても、なんとなく、うまくやれている。それだけで十分だと、自分に言い聞かせている。
けれど、あの夜見たものは、あれきりではなかった。
今でも、ふとした瞬間に見てしまう。電車の窓に映る自分の後ろに、一瞬だけ、誰かが立っているように見えることがある。洗面所の鏡で、歯を磨く手を止めた拍子に、輪郭がわずかにずれて見えることがある。深夜、まどろみの中で、耳の奥にあの声が戻ってくることもある。
――代わって。
その言葉の意味を、私はまだ、正確には理解していない。理解したくない、というのが正しいのかもしれない。
これを書いている今も、部屋の隅、視界の端のあたりに、何か黒い塊のようなものがあるような気がしている。
振り返って確かめる勇気は、まだない。



























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