昔話にそれらしい意味をこじつけただけにしか思えず、興味も湧かなかった。
「それから『つのだせ、やりだせ、あたまだせ』は、生きる力や意識を取り戻せって呼びかけで、亡くなった人をこの世へ呼び戻そうとしている言葉なんだって」
彼女はそこで一度言葉を切り、小さく息をついた。
「だから昔は、この歌を亡くなった人を呼び戻す歌だって言う人もいたらしいの」
俺は少し考えてから口を開いた。
「悪いけどね、俺はそういう話、信じないけどな」
「うん」
彼女はそれ以上何も言い返さず、ただ「そうだよね」と寂しそうに笑った。
普段の彼女なら、俺が興味を示さなければ、話を続けたりしない。まして、こんな話を自分から切り出すことなど一度もなかった。
俺は理由も分からないまま、車を彼女の実家へ走らせた。
車を降りる頃には、雨は小降りになっていた。玄関の明かりが、濡れた地面をぼんやり照らしている。
「いらっしゃい。遠いところまでありがとう」
彼女のお母さんが出迎えてくれた。その後ろに、人が立っていた。最初は誰か分からなかった。
でも、顔を見た瞬間、息が止まった。去年亡くなった彼女の弟だった。
唖然とする俺に、彼女が小さな声で言った。「戻ってきたの」
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