雨がフロントガラスを静かに叩いていた。
ワイパーがゆっくりと動くたび、滲んだ街の明かりが一瞬だけ鮮明になる。
助手席には彼女が座っていた。
車内には、雨音とエンジンの低い音だけが流れている。
こんな日に遠くまで出かけることになるとは思っていなかった。
それでも彼女が「お願い」と言った時、断る理由はなかった。
やがて街灯の少ない山道へ入る。
窓の外の景色は、少しずつ暗闇に溶けていった。
どれくらい走っただろう。
雨音とワイパーの音だけが、静かな車内に響いていた。
彼女はずっと窓の外を眺めたまま、何も話さない。
俺もあえて話しかけることはせず、黙って車を走らせていた。
「ねえ……」
不意に、彼女が小さく口を開いた。
「でんでん虫の歌詞の本当の意味って、知ってる?」
突然そんなことを聞かれ、俺は思わず笑う。
「いや、知らないけど。子どもの歌に本当の意味なんてあるのか?」
「普通はそう思うよね」
彼女は小さく頷くと、雨に滲む窓の外へ視線を戻した。
「昔の人はね、かたつむりを不思議な生き物だと思っていたんだって。昨日までいたはずなのに、雨が降らなくなると姿を消して、また雨が降ると何事もなかったように現れるでしょう?」
「まあ……そうだな」
「だから、あの世とこの世を行き来する生き物なんじゃないかって考えた人もいたらしくて、おばあちゃんもそういう話をよくしてくれたの」
「うーん……昔の人って、自然現象にも意味を見出そうとするよな」
俺は苦笑しながらそう返した。
彼女は気を悪くした様子もなく、「そうかもしれないね」と笑う。
少し間が空いた。
話は終わったものだと思っていたが、彼女は思い出すように続けた。
「『おまえのあたまはどこにある』って歌詞もね、ただ頭を出せって意味じゃなくて、本来のお前はどこにいるって問いかけなんだって」
「へえ」
正直、何が言いたいのか分からなかった。























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