俺は心霊スポットにいた。
呻き声が聞こえてくるが、そんなものはどうでもいい。
「借金がなくなって欲しい」
そう言いながら左手の小指を切って、焼酎で満たされたタッパーに入れた。
くぐもった悲鳴、椅子がズレる音、忙しない足音が聞こえた。
ところで、”指切り酒”というおまじないを知っているだろうか?
願い事を言いながら指を切り、酒に漬ける。
願い事を捧げた指を酒に一晩漬け、その酒を飲むと願いが叶うおまじないだ。
おまじないをやってる姿を人に見られると願いが叶わなくなるから、人が寄り付かない心霊スポットにまでやって来たのに、なかなか賑やかだ。
「借金取りに追われる生活が終わりますように」
左手の薬指を切った。
指輪は外して適当に投げ捨て、指をタッパーに入れた。
指を切った瞬間にひときわ騒がしくなるのは、聞きようによっては歓声に聞こえなくもない。
「やっぱ、大金が欲しい」
中指を切ってタッパーに入れた。
なにか言葉が混じっていた気もするが、ちゃんと聞き取れなかった。
一言に呻き声と言っても何種類もあるのは新発見だった。
あと、すすり泣く声も聞こえる。
それはさておき、キリ良くあと2本はやっておきたい。
「借金取りが絶滅しますように」
これはかなり良い願い事だと思う。
世界中の多くの人を救ってしまったかもしれん。
人差し指をタッパーに入れた。
それにしても、こんな酒は飲みたくないな。
あまりに気持ち悪すぎる。
「指がまた生えてきますように」
我ながら良い思いつきだ。
これが叶えば無限に願い事ができる。
親指をタッパーに入れて蓋を閉じた。
目の前に血まみれの左手があった。
ひと仕事終えて、安堵のため息が漏れた。
























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