その直後、健太の息が止まった。
「山本…後ろ…」
振り返ろうとした瞬間、俺の肩に冷たい手が置かれた。
ケタケタケタ「見つけたよ…」
耳元で笑い声が聞こえ、俺は振り返った。目を見開いた老婆が、歪んだ笑顔で俺を見下ろしていた。
「健太!逃げろ!」
俺は叫んだが、もう遅かった。老婆の手が健太の顔を覆った。健太はもがき、悲鳴を上げようとしたが、声が出ない。そして、健太の体が闇に溶けていくように見えた。
「これで一緒だね」
老婆が静かに言った。
次は俺の番だ。老婆の顔が俺に近づく。腐ったような息が顔にかかる。
「こっちに来い」
その瞬間、俺は全力で老婆を突き飛ばし、走り出した。どこへ向かっているのかもわからない。ただ、走るしかなかった。
突然、足が地面を踏み外した。崖から転落する感覚。そして、暗闇。
気がつくと、俺は森の入口に倒れていた。夕日が沈みかけている。
「あれ…?俺、どうしてここに…」
記憶がぼんやりしている。確か四人で森に来たはずなのに、なぜか一人でいる。頭が痛い。
家に帰ると、母親が心配そうな顔をしていた。
「どこに行ってたの?遅いじゃない」
「友達と…森に…」
言葉が続かない。友達?確か誰かと一緒だったはずなのに、顔も名前も思い出せない。
次の日、学校に行くと、クラスにはいつも通りの顔ぶれがいた。でも、何かが足りない気がする。三人分、席が空いているような気がするが、誰も気にしていない。
「おい、山本、昨日どこ行ってたんだ?」
隣の席の男子に聞かれた。
「森に…友達と…」
「え?一人で森に行ったのか?変なやつだな」
彼は笑った。どうやら、健太も拓也も翔太も、このクラスにはいないらしい。いや、そもそもそんな友達は最初からいなかったのか?
時が過ぎ、記憶は薄れていった。ただ、夜になると同じ夢を見る。俯き街を逃げ回る夢。そして、最後に闇に消えていく三人の影。
「山本…何で置いていったの…」
「約束したのに…」
夢の中で、みんなが囁く。目を覚ますと、枕は涙で濡れている。
























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