奇々怪々 お知らせ

都市伝説

はち男さんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

俯き街
長編 2026/05/22 22:55 139view

一ヶ月後、町の商店街を歩いていた。週末の午後で、人通りが多い。買い物袋を提げながらぶらぶら歩いていると、突然、ある光景が目に入った。

通りすがりの人々が、みんなうつむいている。

老人も、若者も、子供も。全員が地面を見つめ、ゆっくりと歩いている。

心臓がドキンドキンと高鳴る。ありえない。これは現実だ。俯き街ではない。

でも…なぜ?

俺はショーウィンドウに映る自分の姿を見た。そして凍りついた。

窓に映っている俺も、うつむいていた。地面を見つめ、無表情で歩いている。

慌てて顔を上げようとしたが、首が動かない。体が言うことを聞かない。ゆっくりと、確実に、俺の視線は地面へと引き寄せられていく。

視界の端で、何かが動いた。振り向こうとするが、体が固まっている。

そして、耳元で聞こえた。

ケタケタケタ…「やっと見つけた…」

ゆっくりと、不自然に首が回る。目を見開いた翔太の顔が、そこにあった。そいつは笑っている。いや、そいつだけではない。拓も、健太も、石田も、そして無数の顔が、みんな前を向き、目を見開き、笑っている。

「戻ってきたね…」

「もう逃げないで…」

「ずっと待ってたよ…」

やつらの手が伸びてくる。逃げたいが、足が動かない。声も出ない。

そして最後に聞こえたのは、俺自身の声だった。

「これで一緒だね」

気がつくと、俺は商店街の真ん中でうつむいて立っていた。周りの人々もみんなうつむいている。時折、誰かが前を向き、目を見開き、ケタケタ笑いながら歩き出す。新しい獲物を探して。

そう、俺はとうの昔に捕まっていた。あの日、森で。ただ、気づかなかっただけだ。

今でも時々、現世の商店街を通りかかる生きている人々を見かける。彼らはうつむいていない。笑いながら歩いている。

ああ、早く気づいてほしい。うつむいていなければいけないのに。

でも、もし彼らが気づいたら…今度は俺が前を向き、目を見開き、ケタケタ笑いながら追いかけなければならない。

夜になると、まだ捕まっていない生きている人々の夢を見る。そして、夢の中で囁く。

「何で置いて行ったの…」

「早くこっちに来て…」

もうすぐ、また新しい友達が増える。そう願いながら、今日もうつむいて歩き続ける。

商店街のネオンが、ゆらゆらと揺れている。

4/4
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。