一ヶ月後、町の商店街を歩いていた。週末の午後で、人通りが多い。買い物袋を提げながらぶらぶら歩いていると、突然、ある光景が目に入った。
通りすがりの人々が、みんなうつむいている。
老人も、若者も、子供も。全員が地面を見つめ、ゆっくりと歩いている。
心臓がドキンドキンと高鳴る。ありえない。これは現実だ。俯き街ではない。
でも…なぜ?
俺はショーウィンドウに映る自分の姿を見た。そして凍りついた。
窓に映っている俺も、うつむいていた。地面を見つめ、無表情で歩いている。
慌てて顔を上げようとしたが、首が動かない。体が言うことを聞かない。ゆっくりと、確実に、俺の視線は地面へと引き寄せられていく。
視界の端で、何かが動いた。振り向こうとするが、体が固まっている。
そして、耳元で聞こえた。
ケタケタケタ…「やっと見つけた…」
ゆっくりと、不自然に首が回る。目を見開いた翔太の顔が、そこにあった。そいつは笑っている。いや、そいつだけではない。拓も、健太も、石田も、そして無数の顔が、みんな前を向き、目を見開き、笑っている。
「戻ってきたね…」
「もう逃げないで…」
「ずっと待ってたよ…」
やつらの手が伸びてくる。逃げたいが、足が動かない。声も出ない。
そして最後に聞こえたのは、俺自身の声だった。
「これで一緒だね」
気がつくと、俺は商店街の真ん中でうつむいて立っていた。周りの人々もみんなうつむいている。時折、誰かが前を向き、目を見開き、ケタケタ笑いながら歩き出す。新しい獲物を探して。
そう、俺はとうの昔に捕まっていた。あの日、森で。ただ、気づかなかっただけだ。
今でも時々、現世の商店街を通りかかる生きている人々を見かける。彼らはうつむいていない。笑いながら歩いている。
ああ、早く気づいてほしい。うつむいていなければいけないのに。
でも、もし彼らが気づいたら…今度は俺が前を向き、目を見開き、ケタケタ笑いながら追いかけなければならない。
夜になると、まだ捕まっていない生きている人々の夢を見る。そして、夢の中で囁く。
「何で置いて行ったの…」
「早くこっちに来て…」
もうすぐ、また新しい友達が増える。そう願いながら、今日もうつむいて歩き続ける。
商店街のネオンが、ゆらゆらと揺れている。
























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